日本財団 図書館


先ほど、遠藤さんの方から、「グローバリゼーションとナショナル・アイデンティティ」の絡み合いについての指摘がありましたが、私は、海外に出る日本人が増えれば、アイデンティティは否応なく意識されるのではないかと思います。たとえば、スペインに渡った城彰二というサッカー・プレーヤーがいますが、彼は当初、スペインでは「サムライ」と呼ばれたわけです。海外では、「戦う日本の男」というのは、大体、「サムライ」と呼ばれるわけです。

このように考えますと、先ず、我が国は、「海洋国家」の戦略の一環として、人々を外に出すということを基本に据えてみるのは、良いだろうと思います。日本の企業組織では、大体、「国際派」というのは「国内派」に比べ優遇されてこなかったわけですが、こういうところは、改めていかなければならないということです。

以上でございます。ありがとうございます。

伊藤憲一(進行司会者) どうもありがとうございました。まさに櫻田さんの定義されたサイコロジーというのは、私の定義したいと思っている海洋国家と相通じるものがあるわけで、大変傾聴させていただきました。

それでは、平野さん、お願いします。

平野拓也 私の勤務しております海洋科学技術センターと申しますのは海の研究、海洋研究を総合的に実施している機関でございます。当フォーラムの過去の検討課題を拝見しますと、その辺のお話があまりなかったような感じでございますので、そういう立場から二、三、感想を申し上げたいと思います。

先ほどの森本先生が引用されました日本人が「海岸民族」であるという点でございますが、確かにそういうところがあるんですが、少なくとも研究の面では最近、必ずしもそうじゃないと思っております。例えば、私どもの研究活動の範囲は、南北太平洋はもとより、夏期にはベーリング海峡を越えて北極海に入りますし、遥かインド洋や大西洋に遠征して海底の調査をやるというように、非常に外向きのマインドで「海岸」国家を脱しつつあります。これは、最近の研究の内容や性格上そうならざるを得ないわけでございます。

こういう観点から見ますと、海というのは狭くなりつつあるなという感じが強くなります。先ほど海洋法の話がありましたが、経済水域というものが設定されましたものですから、我々の研究活動は、公海上であっても他国の水域に入るのに一々許可が要る。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION