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つまり違うものを海のものと山のものを交易するとか、こういうふうなことが非常に大きな力だったと思いますが、最大の私の言いたいところは、これらの富をどうやってローカライズしたかという力だったのではないか。つまり残せるかどうか。つまり浮いたものをフローからストックに変える力をそれぞれの国が持っていたのかなと。

今でも富というのを私たちは目にすることができるわけですから、それじゃ、21世紀日本はどういう海洋国家を目指したらいいのかということを考えた場合に、伊藤先生からもいろいろヒントがあったんですが、3つぐらいあるのではないか。1つは、資源の有限性というものが非常にはっきりしてきましたので、その意味での環境国家というか、環境資源というものに対して強い考え方を出す。2番目は、生活スタイルというか、そういうもの、自然と近いとか、あるいは伝統文化に対して非常に強いセンシティビティーを持っているとか、こういうものをどうやってうまく情報発信に使えるかということと、3番目は、ハイモビリティーというか、人々が動くということをどのぐらい許容できるかという、そこら辺にあるのではないかなということ。つまり先に住んでいる人たちを大事にするのではなくて、後から来た人も同時に大事にしてくれないと困るわけで、今の会社のシステム、大学のシステム等も、先にいる人が大事にされて、後から来る人が非常に苦労するという、このシステムを変えるというのが結構大きいポイントなのではないかと思います。

要するに、人間の生活を水平的にもっと評価し直す力というのが、21世紀ちょっと必要なんじゃないかなと思ったんですが、これについてどんなご感想を持たれたかということをお聞きしたいと思います。

伊藤憲一(進行司会者) どうもありがとうございます。海洋国家の内容をまた深めていただいたと思います。

では、高島さん。

高島肇久 森本さんのお話を伺っておりまして、私、一番そうだとひざを打ちましたのは、ロシアと中国は陸の民だという部分でございまして、ロシアにしろ中国にしろ、確かに海を目指して来たということはいろいろと言われているんですけれども、基本的なメンタリティーはやはり陸ではないかな。ソ連時代にイラン、イラクのあのあたりを通してインド洋に出たかったソ連、それから、今、ミャンマーを使ってインド洋に出ようとしている中国、海へのあこがれというよりも力をプロジェクトするための道としてそういうことを考えつつ、しかし、底の考え方は基本的には古い陸の考え方を持っている国だ。

 

 

 

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