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そういう意味で、かつてもそうでしたけれども、海をめぐる国際関係は、あるいは平たく言えば、海をうまく利用していくためには、国際的にうまくやっていかなくてはいけないということが、今後もますます重要になってくるものと思います。

それからもう一つ、海の利用の方法がどんどん多様化しているわけです。今までは航海あるいは伝統的な漁業が海の利用の中心でありましたけれども、今後は大陸棚資源あるいは深海底資源あるいは深層水の利用に見られるように、海水そのものをどうやって使うかなど、広い範囲での利用が進められていくこととなり、それから、そのような利用をうまく持続的にするために海洋環境をどうやって保存していくかといった面も考えていかなければいけないということもあります。話のまとまりがなくなってしまいましたけれども、以上のような状況を踏まえてこの討論会あるいは今回のセミナーでは考えていきたいと思います。

伊藤憲一(進行司会者) どうもありがとうございました。

江畑さんから、何をもって海洋民族とするかという問題提起、それから、今、高瀬さんから、海の性質が「無制限自由」なものから「有限分割共有」、そういうものに変わってきているというお話があったんですが、ちょっとご披露しておきますと、過去の2年の議論、特に昨年の議論の中で、「伝統的な狭い言葉の意味で海洋国家というような議論をすることはもう意味がないんじゃないか。もうこれだけ世界が狭くなり、科学技術、特に情報技術が世界を変えつつあるとき、海洋国家か大陸国家かなどという議論は意味がないんじゃないか。軍事面を見ても、もう陸軍、海軍、空軍という時代じゃなくて、統合的に立体的に総合的に運用するという、そういう戦いの姿が何よりもそれをシンボライズしていないか」というような議論もなされたわけでございますが、それらのご指摘のすべてを受け入れて、なおかつ私が主催者としてずっと皆様にリマインドというか、訴えつづけてきたのは、むしろ日本民族というか、日本国民の心の持ち方の問題でありまして、「内に閉じこもって、自分たちだけが―― 一国平和主義とか一国繁栄主義とか言われておりますが――そういう島国根性のままでいてよいのか。したがって、海洋国家というときは海に出ていくという即物的な意味じゃなくて、世界に向かって開かれたサイコロジーと、それに基づくストラテジーを持つ必要があるんじゃないか。そういう意味をむしろ強く込めているんだ」ということを申し上げてきたわけであります。そのことを、もう一度リマインドさせていただければと思います。

 

 

 

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