それからまた、ハンチントンじゃありませんけれども、イスラムの視点はどうしても日本では欠落する傾向が強い。欧米の新聞などではイスラムの切り口というのは一面トップを往々にして飾ることが多いのでございますが、日本の場合なかなかイスラムの観点が一面になじまないというか、そんなことでないがしろにされているような気がして仕方がありません。
そこで、海洋国家日本でございますけれども、まず国家としての存在、そして国力、これをいかにして日本が21世紀にも維持し、また発展していくかという実に重要な課題でございますけれども、国力といっていいのかどうか、それは2つポイントがあると思うのです。それは先ほどフェニキア、カルタゴとローマ、ギリシャのそれぞれの攻防盛衰史についてお話がございましたように、やはり周りにいるライバルとの関係ということもあろうかと思います。21世紀の明確なライバルは、私はやっぱり中国だと思っております。もう既にそうなっているのかもしれない。そうすると、あの大中国とどのようにして接していくのかというのも非常に大きなテーマであり、また、そういったライバルとの力関係ということが世界における日本の力関係にもなってくるわけでございますので、その中国との関係をどう見ていくのか。これは外せない観点だと思っております。
私は先ほどイスラムというふうに申し上げておりますのは、中国でのイスラムの動きというのも結構目が離せないものが実はございます。せんだって私は友人たちと中央アジア研究所というのを勝手につくって、勝手に自分で理事長になっているんです。これはこの間、人質の問題がありましたキルギスも、実は遠く離れたような地域に見られますけれども、中国と地続きでございまして、そしてウイグル、新疆といったような地域のイスラムの人口その他を考えますと――これはそういう観点で日本では見ず、中国というと、すぐ台湾問題というふうに結びつけがちですけれども――ずっと向こう側から中国を見る必要もあるのではないかというふうに思っております。このイスラム、日本でのイスラム教徒が増えるというか、イスラム諸国から人が来るというか、そういった観点も含めてこれからイスラム研究というのをほんとうに真剣にやるべきではないかというのが、まず相対的に対中国というところの力関係としての日本でございます。