(2) 自由討論:全出席メンバー
伊藤憲一(進行司会者) どうもありがとうございました。
森本さん、フェニキア人からアメリカ人まで文字どおり世界史を彩った海洋諸民族の興亡の跡をたどっていただきました。お話を聞いていて、皆さんもそこからいろいろな想いを誘われたのではないかと思います。私もお話の中からいろいろなヒントを得て、思いついたこと、考えたことがございますが、それはまた後ほどといたしまして、これから皆様のご感想を伺いたいと思います。ただ、一言だけ、海の民としていろいろな民族がいろいろな運命をたどったわけですが、やはり賢明な判断をして賢明な道をたどった民族と、愚かな道をたどり、あるいは判断を誤って没落した民族とがいると思います。私はカルタゴの運命については、あるいはヴェネチアも入れていいのかもしれませんが、ポルトガルもそうかもしれませんが、反面教師として学ばなきゃならないものを残していったと思いますし、他方、イギリスとかアメリカのような成功し、かつその成功を長期にわたって維持している国の生き方の中には、海洋国家としての道をたどる上で大変参考になる歩みがあったように思っているわけでございます。
それでは、最初に、小池さんからお願いしましょうか。
小池百合子 トップバッターで恐縮です。この後サウジ大使館に行かなくちゃいけないので、今しこたまワインをまず飲んで、それから出向こうと思って、ということで失礼いたします。
ほんとうに知的刺激の多い、また壮大なスケールのもとでの短いお話を伺わさせていただきまして大変ありがとうございました。私の感想と申しますか、食い逃げと言われないように申し上げて失礼したいと思っているんですが、私にとりましては大変親しみのある地名が先ほどからたくさん出てまいりまして、まさにそのとおりだということを感じておりました。
私がずっと通じて持っている視点は、イスラムから世界を見るということでございまして、今お話に出てまいりました例えばシンドバッドもそうでございますし、あと、イブン・バットゥータという大変な大航海をした方もおられるわけで、イスラムという観点から見ますと、まさにアラビア人たちがイスラムという宗教を乗っけて、マレーシア、そしてインドネシアまで到達はしているのに、なぜか日本には来ていないということ、それから、最近のインドネシアの紛争にいたしましても、あれもアチェであるとか、イスラムとそしてカソリックと、さらに加えて言うならばマカオの中国返還というようなことを、宗教という面からも、またジオポリティカルな面からもとらえるという必要があるのではないかというふうに思っております。