そのあたりを示唆するような議論が昨年行われたわけでございます。
海洋同盟としての日米同盟が今日の日本の繁栄の背景にあるけれども、これから先のことを考えると、その同盟を維持するだけのためにも、日本は今までのままの生き方ではやっていけないのではないか、というような議論が交わされたわけでございます。
それを受けまして本年度の議論でございますが、「海洋国家日本の構想」ということで、4回にわたりましてご議論いただきたいと思っているわけでございます。まず、日本というのはやはり逃れようもなくこの極東の端に、太平洋の西端に浮かぶ4つの島として存在するわけで、この与件、条件というものは古代から変わることなく我々日本人のアイデンティティを規定し、また戦略、戦術を規定するものとして存在してきたわけでございますが、そのことを考えると、世界の類似の条件下にあった諸民族の身の処し方から何を学ぶべきかということをまず考えてみたいと思うわけでございます。また、同じく海洋とのかかわりの中で国家の戦略を考えるとしても、今日の21世紀を迎えようとしている世界は、あるいはグローバリゼーションあるいは情報革命ということで、全く新しい文明状況の中にありますので、そういった新しい与件、条件にどう対応していくかということが当然私どもの検討内容に含められなければならないわけです。
そのような議論を踏まえて、最終的には具体的な地域秩序あるいは世界秩序の形成という問題に挑んでみたいと思っているわけでございます。日本人は秩序というものを世界から与えられたものとして、それにどう適応するかという受動的発想しかこれまで持ってこなかったわけですが、真の「海洋国家」になるということは、そういう秩序を構想し、つくり出すために、みずからイニシアチブをとるという、能動的発想を求めます。そういうことで初めて真の「海洋国家」になれるということではないかと思うわけでございます。本年度の議論でどこまでその辺に肉薄することができるのか、楽しみにしているということでございます。
以上、司会者から若干長々とした、言わずもがなの話をさせていただきましたが、それでは、ただいまから8時半までの時間がございますので、まず冒頭、本日は森本哲郎さんから問題提起者として皆さんに問題を投げかけていただくことになっております。それでは、30分くらいいろいろな我々の議論のヒントになるようなお話をしていただいた後、文字どおり自由闊達に皆様のご議論を一言ずつ、二言ずつでもいただきたいということでございます。
それでは、森本さん、お願いいたします。