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これについては個々にご説明をしている時間もないですけれども、たとえば、「住まう」のところをご覧ください。住宅すごろくのあがり、つまり「終の棲家」ですが、家族に囲まれて人生の終末期を過ごす住宅はかつて、持家一戸建で十分に機能してきたわけですが、単身になれば安心を求めて都心で仲間と住んだり、サービス付きの住宅に移り住む、集住傾向に変わってきています。昨日発表された地価は、下落傾向がこれまで続いていましたが、都心部のある地点ではもう上昇に転じています。今後は高齢者の都心回帰が進み、集まって住むことに対する社会的価値が高まってくるわけです。今までは郊外に住み、都心で働くというようなライフスタイル志向の社会基盤に対して投資していたわけですが、都心の「働く」という機能に加え、中心部に集まって住める、歩いたり車椅子でも買い物に出かけられる街づくりにするための機能更新が必要です。働くということに対しても、高齢者は非常にわがままです、出来ればSOHO (Small Office/Home Office) で、自宅や自宅から徒歩15分以内でとか、自転車でいける地域というふうに職場の選択も職住近接志向です。今までのように満員電車に揺られて1時間半も通勤したくないのです。多くが就労希望を持ってるわけでございますけれども、収入だけが目的ではなく、生きがいや社会参加とか社会貢献とか、自分の持っている知識を伝承していくという欲求が非常に強いわけです。

私はここ三年、産業別に高齢者雇用するための方策を検討する調査を担当しておりますが、運輸関係は他の業界と比べて、従業員の高齢化が進んでいます。この事業は、職場の中で若い人達が出来ることと、高齢者が出来ることと明確に分業化し、高齢者の経験や知識が生かせるような職務を見出し、高齢者の希望にかなった雇用管理制度をつくっていこうとするものです。3年前からシティホテル業界での検討を始めました。全国のシティホテルを回っていろいろとご意見を伺いますと、従業員のほうは定年後も今の職場で継続して働きたいという意向が強いですが、定年前と同様に働くのではなく、趣味の合間に、また孫の運動会には休みを取りたいといった自由な働き方を志向するわけです。

一方ホテルのほうは24時間稼動していますから、夜勤専門で雇いたい、フロント対応で雇いたいといった職種、時間限定の希望もある。シティホテルは現在、すごく厳しい経営環境で、スーパーホテルと呼ばれる、カードでチェックインできるところが出てきていますので、削れるコストは全て削って、今後は人件費をさらに削っていくかという段階にきている。そうしますと、20代の若手をフルタイムで採用するよりも、定年を迎えた人に朝・昼・夕食の忙しい時間帯だけレストランで働いてもらうとか、レストランの空き時間以外のところではリネン交換に回ってもらうとか、高齢者を多能化させて活用し、そして公的な助成金を活用して、高齢者の収入を大幅に下げることなく、人件費の圧縮が可能になります。

 

 

 

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