日本財団 図書館


これまでは、介護を他人の手に任せることについての偏見、他人を家に入れ、介護してもらうことについて抵抗もあったわけですけれども、介護保険が導入された事によって、介護サービスは社会が提供するものとして捉えるような意識が出来上がりつつあります。老後にふさわしいバリアフリー住宅に移り住み、老後の自分のケアは他人の手で、家族は精神的なサポートをして欲しいというふうに変わってきていますから、高齢者の身体機能に配慮した住宅戸数を増やしていくことが緊急課題です。

また、ハッピーリタイアメントという概念のある欧米に比べ、わが国では高齢者の就労意欲が旺盛な点は特筆すべきことですが、65歳を過ぎても仕事をしたいという人たちは7割を超えています。現在でも、65歳以上の4割が就業しています。今後、年金支給開始年齢が引き上げられますから、60歳から段階的に65歳になりますから、この5年間の経済的自立をどう図れるかということが重要です。高齢者の多くは、比較的、単純作業に就いています。シルバー人材センターの紹介で、葉書の宛名書き、清掃、植木の手入れといった作業的なものが多いでしょう。今後、ホワイトカラーの就業意欲をどう充足させていくかということが課題になっています。知的欲求を満たし、自己充足をはかれ、なおかつ好きな曜日や時間帯だけ働くといった、ワークシェアリングや専門能力を生かせる派遣制度の充実も必要でしょう。

老後の経済的自立をどうするか、年齢が高くなるほど公的年金依存度が高い。今の40代、50代はもう年金はあてに出来ないと考えており、年金を補完するため、自分の就労所得を老後の収入のメインに据えたいという人たちが多い。11ページですけれど、要介護高齢者のデータです。要介護の定義は、虚弱、寝たきり、痴呆ですが、現在、大体260万人位ですが、あと50年すると520万人に倍増します。さらに、障害を持つ高齢者が増える。現在、障害者手帳を有する障害者は日本に400万人ですが、この人たち以外に、どことなく見守りが必要だという方も含めればもう少し増えていくでしょう。障害者の6割が65歳以上の高齢者で、高齢化することによって、やはり1つの障害だけではなく、車椅子で白内障で視力低下とか、人工透析をしており、聴力が衰えているというふうに、障害の重度化、複合化、慢性化が増加しています。

経年的にみますと、後天的な障害、つまり自動車事故で視力をなくしたとか、発生時期が18歳以降という比率が高まっています。それはどういうことかと申しますと、ある日突然視力を失ったことによって点字が読めない。年をとってから生活習慣病で何らかの障害を抱える人たちも増えていますし、最近はリストラ等も行われ、心の病を持つ人たちも増えています。心の病、交通事故、生活習慣病による後天的な障害の増加はとりわけ今後高齢者が増加することによって、比率は高まるといわれています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION