日本財団 図書館


一方で今の若い人たちは、住宅についてどうするかというと、住宅というのは親から相続するものだというふうに割り切っている人たちが経年的に増えています。

じゃあ、親の介護はどうするかというと、これは国際比較でもおもしろい結果が出ていますけれども、アジア、中国とか韓国の人たちはどんなことをしてでも看るという人たちが8割、9割なんです。日本人は出来る範囲内で看ると、自分たちの生活が非常に大事と、自分たちの生活がまず、中心にあって出来る範囲内で親の生活を見るという若い人たちが増えている。ですから、扶養意識の変化で子供があっても老後は子供に頼れない時代です。老後が長期化し、周りも高齢者だけの世帯が増えていく。そこで、高齢期にいかに自立して生活していくか、車椅子に乗ってでも近所に買い物に出たり、身の回りのことは出来る限り自分でしていく必要性が生じてきます。

10ページ目がプロダクティブエイジングについてのデータを載せています。私どもでは都市部の団塊の世代の調査をしましたが、団塊の世代の人たちというのは、高校入試も大学受験も競争社会をかいくぐってきたわけですから、それなりにくたびれない人たちなんです。

団塊世代は、大学進学や就職で都市部に出てきて、定住した人たちが多いんですけれども、年をとっても田舎には帰らない、今いる自分の地域で住みつづけたいという人たちが多いのです。その理由は「持家がある」、「住み慣れた地域に人間関係が出来ている」というものが多い。老後、夫婦で現住地で暮したいという人たちが多いのです。

男女別にみると非常に面白くて、男性はやっぱり自分が最初に逝くと思うんでしょう、あくまでも強気志向で郊外の持家一戸建てに妻と2人で住むという人たちが多く、子供とは同居志向。男性は寂しがりなのでしょうか、老後も妻に世話をしてもらって子供と孫に囲まれて暮したいという人たちが圧倒的です。

妻のほうは自分は老後、1人になるという自覚をした上での回答でしょうか。郊外の持家一戸建てから都心部に移り住みたいという都心回帰志向を持っています。一戸建てというのは間取りも自分に広すぎるし、設備も老朽化しているから、友達と住める都心部近くのマンションがいい、医療施設や商業施設にも近く、映画館や文化施設もあり、緊急対応や余暇時間の充実を考慮しています。子供とは近居志向で、介護サービスは専門家にゆだねたい、自分が介護の経験がある人ほど子供には絶対介護させたくない、介護経験によって子供に対する介護の依存意識が違います。

現在、日本の中で高齢者のためのケア付住宅、住宅に何らかのケアサービスがついている住宅というのは、高齢者人口の数%程度しかありません。経年的に見れば、老後、「自分がひとりになれば、持家一戸建てを売って特別養護老人ホームという福祉施設やケア付き住宅に移り住みたい」という人たちが確実に増えています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION