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震災などの災害時にも非難の問題が出てきます。比較的、地方では地域コミュニティもしっかりしてますけれども、「都会の孤独死」ということがよくいわれますが、都会では、隣の人が亡くなって3ヶ月気づかなかったとか、そういうことも起こっているようです。地域全体で高齢者の単身や夫婦世帯が増加していくということは、地域の中の見守り機能も低下していくということにつながります。皆さん、お聞きになったことがおありになるかと思いますけれども、東京の多摩ニュータウンというところは、一時期に若い世帯が集中して移り住んだことによって、今後、一挙に高齢化が進みます。まだまだ、東京都全体から見れば、高齢化率は低いのですが、もし、エレベーターの無い4階・5階建の中層住宅で、高齢者世帯が増えていけば、東京都の公営住宅で全世帯のうちで高齢者世帯、65歳以上を世帯主とする世帯は大体6割くらいで、公営住宅そのものも高齢者住宅化しているわけですが、いろいろな世代ミックスがある場合は、例えば野菜買いにいくにしても、お隣の若い奥さんに頼もうとか、布団が干せない場合は隣の学生さんに頼もうということができますが、団地が高齢者ばかりになると、地域での支え合いも出来なくなります。火災の初期消火や非難ができない、空き巣に入られたとかお互い見守る機能が低下していきます。

9ページは高齢者は多様な存在だということを示しております。本日も20代の方から60代、70代の方がいらっしゃると思いますけれども、年齢というのは靴のサイズのようなもので、人間の特性をあらわす一つの目安です。60歳で痴呆が進行している方もいますし、体力は40歳並みの方もいらっしゃいます。体力面でもスポーツ歴を持っているか否か、健康にどれほど気配りをしてきたかによって、非常に多様化しておりますし、時代に対する価値観みたいなものも老後観に大きく影響してまいります。

2000年時点で65歳になる人というのは昭和10年生まれ以降、昭和二桁生まれの方ですね。この方たちは思春期に日中戦争、太平洋戦争を経験してきましたし、戦後経済復興の柱になりましたから非常に忍耐強く、多少のことは目をつぶって我慢しよう、特別養護老人ホームの居室が6人部屋、4人部屋であっても入れていただけるだけで有り難いんではないかと考えてしまう。

しかし、2020年、2030年に高齢期を迎える世代は、バブル経済を経験し、非常に物欲も満たされ、豊かな時代を経験している人たちです。住宅や生活の質の面においても豊かさを追求し、自分の嗜好に合うものについては消費を惜しまない人たちです。相続に対する意向をみましても、昭和10年生まれ以前の人たちというのは非常に相続意識が強く、自分が我慢をしてでも子孫に美田を残したい、財産を残したいという人たちが多いんですけれども、昭和22年、23年、24年、つまり、団塊の世代の人たちは非常にドライで住宅は自分たちで使い切る、「子孫に美田を残さず」みたいな価値観が強いわけです。

 

 

 

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