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老後の長期化、子育て期間の短期化によって個人が持つ自由時間も延びてまいります。定年までの働いている時間が10万時間ありますけれど、定年以降の余暇時間というのも10万時間です。これをどのようにすごしていくか、旅行に行くこともありましょうし、地域活動やボランティアに参加することもありましょう。これだけ長い老いの期間を、どれだけ自分というものを確立しながら生きるかというのは、65歳になってから準備するのでは遅いのです。既存調査によれば、40代くらいから老後の余暇の準備してきた人のほうが、やはり高齢期の満足度が高いという結果が得られています。老後の問題というのは65歳以降の問題ではなく、経済的な面や生きがい、また親世代の介護の問題も含めて40歳代からの心の準備が必要ではないでしょうか。

7ページでございますが、これは高齢者を前期と後期で分けてお示しした図でございます。もうご存知でしょうが、前期高齢者というのは、65歳から74歳をいい、後期は75歳以上です。現在、平成12年、1年前の数字なんですけれども、前期高齢者というのが1,298万人、後期高齢者は880万人ですが、あと22年しますと逆転して、75歳以上の後期高齢者が増えてくるのです。高齢者全体でみますと、虚弱、寝たきり、痴呆といった問題を抱える人は10.3%です。10人いれば1人くらいです。60代後半では、要介護比率は大体2.9%くらいです。100人いると大体3人弱くらいの割合で、寝たきりとか虚弱になる。80代後半で28.9%ですから100人いれば71人の方はなんら健康面では問題がないわけです。

しかしながら、後期高齢者になるにしたがって、虚弱になり、支援や見守りが必要な人たちは増えてくる。移動の面においても60代、70代の前半では車を運転することができたけれども、75歳以上になると、反射神経や運動能力の面でも運転をあきらめざるをえない状態になるかもしれません。

8ページをご覧下さい。これは日本の家族形態ですけれども、現在は、結婚しても親と同居しないという若い人たちが増え、親世帯との同居率が低下しています。10年前の1世帯あたりの平均家族数は大体3人を若干下回る程度でしたが、今後10年間で2人くらいになっていく。核家族傾向が強まりますが、高齢者世帯では、単身や夫婦世帯が増加、さらに女性の一人暮らし世帯や寡婦世帯がきわめて増加する傾向にあります。増加率をみますと、90年から2010年で、単身世帯は大体2.9倍、高齢者、夫婦のみの世帯は2.5倍に増えて、親と子供からなる世帯は2.8倍に増えます。

単身世帯が増えるということは、地域社会からの孤立、社会的孤立が生じる。子供が近居しているといえども、家の中に高齢者がひとりでいると、家庭内の事故の発生率が高くなります。具体的には火の不始末、防犯上の問題などでしょう。

 

 

 

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