日本財団 図書館


6ページをご覧ください。これは、今から約50年前と、正確には46年前ですけれども、平成8年、の寿命というのを比較しております。昭和30年には、男性の寿命が63歳、女性が68歳だったわけです。平成8年には76歳と83歳です。アメリカの科学雑誌などでは、今後、日本人は人生90年時代を迎えるだろうといわれております。2つの時代の寿命を比較してみますと、昔は初婚年齢が、男性が26歳、妻が大体23〜24歳であり、子供の数も多かったわけですから、だいたい3人程度の子供を産みました。3番目の子供が大学を卒業して結婚するのが、夫が59歳、妻が54歳のときです。3番目の子供が結婚して夫が亡くなるまでは大体4年間。妻は13年間です。

平成8年の場合は、最近の出生率は1.34、約1.3人くらいなんですけれど、2人産むと仮定しましょう。そうすると、2人目の子供が結婚する時点が夫が60歳、妻が58歳。子供数が減りましたから、出産期間は50年前に比べて6年から3.6年くらいに縮まり、子供を扶養する期間、最初の子供が生まれてから3番目の子供、もしくは2番目の子供が大学を卒業するまで、親としての責任を果たす期間とお考えいただければいいと思いますが、これは26年から24年くらいになっている。夫が定年を迎え、夫が死ぬまでは8年、その間、退職金を取り崩し年金と併用して生活をしていればよかったわけですけれども、今はその倍の16年あります。寡婦期間、つまり、夫が亡くなって妻が1人で生活をしなければいけない期間ですが、それは4年から8年になりました。老後の長期化によって、経済的自立や身辺自立する期間が倍層し、女性がどう自立して生きるかということを突きつけられる時代になりました。

現在、高齢者介護は多くの場合、女性の手によって行われてきましたが、子供が少なくなり、高齢者が増えるということで、さらに寿命自体も伸び、男性にも自分の老親の介護をする必然性が生じるのです。さらに、3番目の子供が結婚して妻が死亡するまで、雛鳥が巣立って、巣が空になった期間、つまり夫婦2人で過ごす「空の巣期間」を比べますと、昔は13年だったものが、今は34年です。これをいろいろな集まりでお話しますと、男性の方は「うん、34年か、じゃあ妻にはいろいろ苦労をかけたから、旅行にでも行って楽しめたら」と仰るのですけれども、女性の方は「わあ、34年もあるの」というふうに嘆かれる。男性、女性によって受け止め方が違うわけです。夫婦2人で共有する期間が長くなった、つまり、夫婦2人で、子育て期間以上の長い時間をどう向きあって暮らすかという課題に直面する時代になっています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION