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65歳の人は70歳といい、70歳の人は大体75歳。大体は「老いの拒絶感」がありますから、誰しも、自分を高齢者だと認めたくないわけですが、これからの高齢者は、ますます年齢概念がない人たちです。今は人口の6人に1人が高齢者ですが、後50年すると3人に1人です。これまでは高齢者は少数だったわけですけれど、高齢者マーケットが非常に拡大します。

現在、日本の中で一番高齢化していますのが、山口県の東和町ですが、人口が100人いるとおよそ45人が高齢者です。85歳の人の配食サービスを76歳の人がしている。老老介護、つまり、元気なお年寄りが高齢者を支える社会でございます。現在はどちらかといえば農山漁村や過疎地域といった地方が高齢化率が高うございますけれども、高齢者の数だけで見ると今、東京都が一番です。この福岡県を含む、都市圏をはじめとする3大都市圏で、今後、高齢者数が飛躍的に増してきます。高度成長期に若者など労働人口を都市に送り出した地域が先行的に高齢化し、それに遅れて、労働人口を受け入れた地域が次第に高齢化をしていく。2010年までに高齢者数は400万人増加するのですが、とりわけ東京圏、そして近畿圏、中部圏そしてこの福岡を中心とする都市圏での増加が顕著です。

日本で一番住宅平均面積が広いのは富山ですが、おばあちゃんが例えば寝たきりになった時、都市部に比べて、一世代同居率や近居率も高いわけですから、バリアフリーの住宅を作って近くに住む子供や親戚で面倒を看ましょうということで、何とか家族や地域ぐるみで老いを看ることも出来るわけです。しかし都市の生活を想像してみますと、住宅が高密度で狭い、高齢者のひとり暮らし、独居率も高く、地域コミュニティも希薄である。今、世界で一番高齢化していますのはスウェーデンでございますけれども、人口1千万の国の高齢化と、人口1億2千万人の高齢化はスケールが異なります。高密度社会の中で急激な高齢化を経験するのは、いまだかつて、どの先進諸国も経験したことがないことでございます。

先ほど高齢者をひとくくりに捉えるべきでないと申し上げましたけれど、健康をX軸と経済面をY軸という2軸でみますと、高齢者は大きくわけて4つの分類で示されます。健康で経済的にも問題のない人、健康であるが、経済的にはあまり豊かでない人、経済的には問題は無いものの、健康に問題があり、つまり虚弱や寝たきり、最後に、経済的にも健康面でも問題ありの人、それぞれに求められる対応が異なってまいります。高齢者は一般的には豊かだといわれておりますが、生活保護を受給する世帯も増えており、非常に貧しい世帯と、貯蓄や不動産など資産に申し分のない豊かな世帯の2極分化、格差が大きくなっている傾向がございます。

健康や経済面では格差が大きいのですが、今までのように一律に高齢者イコール「社会的弱者」、つまり、高齢者は要援護、要支援と見なすのではなく、「プロダクティブエイジング」、生産的な高齢者として位置付けていく必要があるでしょう。諸外国に比べて、高齢化のスピードが非常に早いという点もわが国の特徴のひとつです。

 

 

 

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