奄美大島群島の海上交通ネットワークシステムの確立に関する調査研究(中間報告概要)
1 調査の概要
奄美群島は、本土から遠く離絶した外海離島、台風常襲地帯という厳しい自然的・社会的条件下にある。又、若年層を中心とする人口流出や高齢化が進み、活力ある地域社会を維持する上で多くの課題を抱えている。
しかしながら、その一方で、温暖な気候やサンゴの海中景観などの優れた自然、個性的な文化・歴史、伝統芸能、水産資源など多くの魅力に恵まれていることから、これらの亜熱帯性・海洋性の特性、地域資源を生かした農業や、水産業、観光などの振興を図ることが期待されている。
また、新全国総合開発計画(平成10年3月閣議決定)においては「南九州から南の海洋に連なる地域においては、産業・観光において海を通じた交流・連携の推進をはかる。」と位置づけられている。
このような状況のもと、奄美群島の総合的な交通ネットワークシステムのあり方を検討するものであり、本年度は、社会・経済の特性、交通体系等の現状と問題点を把握し、自治体・交通機関等関係者へのヒアリング調査、交通機関等利用者へのアンケート調査を実施し、海上交通ネットワークシステムの確立に向けた課題の抽出を行った。
2 奄美大島の社会経済特性
(1) 人口の動向
・大島本島の人口の推移をみると、昭和30年をピークに年々減少傾向にあり、平成7年では過去最低の75832人となっている。
・瀬戸内町の人口の推移をみると、昭和50年から年々減少の一途をたどっており、平成7年では12017人となっている。
(2) 産業別就業者
・産業大分類別の就業者数をみると、大島本島全体では第1次産業就業者比率が9.1%、第2次産業就業者比率が26.2%、第3次産業就業者比率が64.7%である。
・瀬戸内町では第1次産業の比率が高くなり16.1%、第2次産業、第3次産業は各々23.8%、60.1%となっている。
・瀬戸内町の第3次産業の中で特に多いのは、サービス業、卸小売業である。また、第1次産業では漁業が農業を上回っている。
・瀬戸内町においては、「漁業」「建設業」「サービス業」の就業者数は伸びているが、他の部門は概ね減少している。特に、「農業」「製造業」が大きく減少している。
(3) 観光客の動向
大島本島への入込み客は、平成4年以降、年間40万人を上回る水準で微増もしくは横ばいで推移している。
・瀬戸内町内の入込み客は、平成9年までは上昇傾向で推移していたが、平成10年には前年比約9000人の減少で約86700人となっている。
3 奄美大島の観光客の特性(宿泊客に対するアンケート結果による)
・奄美大島を訪れる観光客の目的は、マリンスポーツや自然景観の鑑賞、のんびりと休養するためなどであり、そのほとんどが1〜3回程度の低頻度層、滞在日数は本土との隔絶性から2泊から3泊が主流である。
・観光スポットとして知られている場所において、「マングローブ原生林」や「ばしゃ山村」、「あやまる岬」などの北部地域の他に「加計呂麻島」も6割近くが認知しており、2割程度は実際に行ったことがある、または行ってみたいとしている。来島の際の不満点をみると、「道路・観光案内が少ない」ことや、「島内交通の便が悪い」などがあげられている。