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長江流域経済圏と九州経済圏の国際交流を支える国際航路網のあり方に関する調査(概要)

(日本海事財団補助事業)

 

1 調査の概要

10億を超える人口を有し、急速な経済成長を続ける中国は、生産拠点あるいは消費市場として、世界の注目を集めている。中でも長江デルタ地域は、大規模開発プロジェクトの相次ぐ上海を中心に、中国経済の成長の極としてめざましい経済発展を遂げている。さらに、長江の河川交通を活用して、中上流方面への経済発展の拡大が期待されており、長江流域が一体となった「長江経済圏」が形成されつつあるといえる。

一方、九州経済圏においては、中国への対外直接投資や日中間の国際分業が活発化し、中国との輸出入貨物が増加している。このため、九州経済圏と長江経済圏との間においては産業、貿易、観光などさまざまな面での国際交流の進展が期待されており、その実現のためには、貨物・旅客両面にわたる国際航路網の充実が不可欠である。

こうしたことから、本調査では、長江経済圏と九州経済圏の国際交流を展望するとともに、国際交流の促進に向けた国際航路網のあり方とその形成のために求められる取り組みの検討を行い、実現に向けた課題を整理した。

 

2 長江経済圏と九州経済圏の国際交流の展望

(1) 中国の経済発展における長江経済圏の位置づけ

長江経済圏の発展方向は、1]長江デルタ地域(上海市、江蘇省、浙江省)、2]武漢を中心とした長江中流域、3]重慶市を中心とした長江上流域の3地域程度に分けられる。それぞれの経済発展の段階に基づいた国際交流の促進を図っていくことが適当である。

 

(2) 業種別の国際交流の方向性

日本企業の対中投資は、1]海外への輸出を目的とした「輸出生産拠点確保型投資」、2]中国市場の開拓・確保を目的とした「市場確保型投資」に大別される。当初は「輸出生産拠点確保型投資」が多かったが、除々に「市場確保型投資」が拡大する傾向にある。

以下、主要業種ごとの輸送需要の方向性を示す。

1] 電気・電子産業

・中国で最終加工まで行った製品の九州経済圏向けの輸入

・九州経済圏から長江経済圏の生産拠点へ供給される部品・半製品等の輸出

2] 繊維産業

・中国で最終加工まで行った製品の九州経済圏向けの輸入

・九州経済圏で最終加工を行う製品の輸入(九州経済圏以外向け製品を含む)

・九州経済圏から長江経済圏の生産拠点へ供給される部品・半製品等の輸出

3] 食品、家具等

・中国で最終加工まで行った製品の九州経済圏向けの輸入

・九州経済圏で最終加工を行う製品の輸入(九州経済圏以外向け製品を含む)

 

(3) 旅客輸送面からみた国際交流の方向性

今後中国から日本への観光客来訪に対するビザが解禁されれば、日本への観光客数が飛躍的に増加することが見込まれる。

ただし、観光客の輸送需要を海上輸送に取り込むためには、九州経済圏の地理的優位性を活かし、テクノスーパーライナー(TSL)などの超高速船を導入することにより、従来型のフェリーと比較して所要時間の大幅な短縮を図り、かつ航空より安い運賃を設定できることが必質になる。

また、2000年3月より神戸〜博多〜釜山間に定期クルーズ船が就航し、夏期には上海へも航路が延長される予定であり、こうした船旅自体を目的とした輸送ニーズの顕在化も期待される。

 

3 長江経済圏と九州経済圏を結ぶ国際航路網のあり方と実現方策

(1) 長江経済圏と九州経済圏を結ぶ国際航路網のあり方

(次頁表参照)

 

 

 

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