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ブレイクタイム

 

まぐろとかつおの都市「日南」

 

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日南市の油津漁港は鰹、鮪漁業の全国有数の基地であり、3月〜5月にかけて水揚げのピークとなる。私が当地に転勤になったのはそのような最中の昨年の4月であった。

市場への水揚げは午前5時頃から始まるが、支局のすぐ近くに魚市場があったので、はじめのころは、もの珍しさも手伝ってよく見に行ったものである。

市場の床一面に鰹やクロマグロ、キハダ、ビンナガなどの鮪類が所狭しと並べられ、時には二百キロを超える太物で高級魚のクロマグロも揚がり、いつも、仲買人や魚協職員の威勢のよい声で活気づいていた。

鰹一本釣船の漁場は日本近海で、1月に沖縄周辺に出漁し、その後、黒潮本流に乗り北上する魚群を追い移動し5月頃まで小笠原周辺で操業、最後は東北の港を基地として11月頃まで三陸沖で操業する。船型は百トン前後で14人から23人の船員が乗り組み、出漁日数はおおむね2日〜5日であるが、沖縄周辺では10日〜15日となっている。

一方、鮪船は19トンから4百トンの船型があり、日本近海からマーシャル、ソロモン、キリバス周辺の南方海域までの広範な漁場で周年操業をしている。

19トン型の小型鮪船は鰹船同様の操業形態で1月に沖縄周辺に出漁した後、魚群を追いながら北上し、5月から12月まで三陸沖で操業する。この船型は生鮮魚が主体で6人から7人の船員が乗り組み、出漁日数は1週間程度となっている。

また、百トンを超える鮪船は南方海域まで出航するマイナス55度の凍結船で13人から15人が乗り組み、出漁日数も1航海3ヶ月〜4ヶ月と長い。

鰹は、3月から4月にかけて獲れたものが脂が乗りおいしいと言われているが、とりわけ、一番おいしいのは5〜6キロものとされている。

この時期に水揚げされた鰹は3キロもので4千円〜5千円の相場を付けているが、最近の年間平均単価はキロ当たり3百円程度となっている。

近海ものの生の鮪は2月から3月にかけて水揚げされたものが、特に脂が乗っておいしいと言われている。市場では、尾鰭から15センチ程度のところを鮪の種類によって切り落としたり、V字型に切り込みを入れ脂の乗り具合や肉質を見て値がつけられている。

脂の乗った太物のクロマグロはキロ当たり1万円〜1万5千円の高値となるが、4月以降に水揚げされた肉質が黒くなったものや、産卵後の脂のなくなったものは3千〜1万円も下落する。

バブル期のクロマグロの年間平均単価は5千円〜6千円の高値を付けていたが、最近では2千円台で推移している。

因みに、これまでに、油津港で水揚げされた最大のクロマグロは昭和61年の483キロ、288センチのものとされている。当地では、一年中新鮮な鰹、鮪が食べられるが、やはり旬のものが最高である。

シーズン中、支局で酒を飲むときには新鮮な刺身を用意することになるが、旬のクロマグロは高嶺の花で、もっぱら鰹にお世話になっている。その日に水揚げされた3〜4キロものの鰹を買ってきて三枚に降ろし、刺身とタタキにして3人で食べるが、満足できる味と十分な量である。

うまい魚にはうまい酒が必要だ。地元にはやはりうまい焼酎も用意してあった。25度が主流の焼酎界にあって、地元の焼酎は20度である。

原料は芋であるが、芋の臭いはなく、焼酎独特の甘味と香りも程良く、実に口当たりがよい。これを、お湯割りにして飲むが、脂の乗った刺身やタタキとよく合い味も格別であり、ついつい飲み過ぎてしまうこととなる。

 

九州運輸局

油津海運支局

網田利治

 

 

 

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