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皮膚の損傷がないのが閉鎖牲骨折でこの場合はまず、固定を行なって痛みをとる。固定するのは骨折の上下の関節を含めて固定することが大切です。そして出来れば患部を心臓の高さより挙上し、骨折の部位を冷やして下さい。骨折の部位に皮膚の傷を伴う開放性骨折は、固定と傷の消毒処置をすることが必要になり、なるべく早く病院での処置を受ける必要があります。傷部より骨折部位に細菌、ばい菌が入って化膿しますと、骨髄炎を起こし治癒にとても時間を要したり、骨折が治らなくなりますので、できるだけ早く6〜12時間以内に病院で処置していただくことが大切です。

固定の方法ですが、良肢位とよばれる、図14のように大体どの関節においても少し曲がった楽な状態で、骨折の上下の関節を含める形で添木をあて固定して下さい。(図14)

 

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図14

 

それから骨折は、一見するより出血量が多いということを皆さんに知っていただきたいと思います(図15)。

 

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図15

 

皮膚の損傷がない大腿骨閉鎖性骨折の場合、外見上は出血を見ないのですが、皮膚の下、皮下組織に500〜1000ミリリットル出血するわけです。循環血液量の10%までの出血は大丈夫なわけでありますが、体重70キログラムの人で、体中で4900〜5600ミリリットルの血液の循環があります。大腿骨骨折の場合になると、循環血液量の10%を超える出血量になってきます。知らないうちに骨折の部位に血腫ができて多量の出血が起きている状態になるということです。ここで一番こわいのは交通事故の場合によくみられる1000〜2000ミリリットル出血する骨盤骨骨折です。救急隊が病院に運ぶまで手当を行なうのですが外見上は全く出血していないのですけれども、体の中にどんどん出血していき段々と血圧が下がっていき、命にかかわります。大腿骨骨折とかですと、片足が大丈夫だと強がりが出てしまって動かれたりするんですけれども、内出血してきますので安静にしていただいて、なるべく出血量を抑える様にして下さい。固定と言うのは安静も含めてのことです、覚えておいて下さい。

続きましては、創傷処置、傷の処置についてです(図16)。

 

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図16

 

以前から処置にヨモギや馬の脂等が使われることがあります。これを使われますと傷の中に異物が残ってしまいますので、こういうことはなるべく避けていただきたい。また、最近はキズドライという市販の薬を用いて化膿させてくる人が増えています。これも傷の洗浄や消毒がしっかり出来ない段階でつけられますと、いわゆるばい菌等を傷の中に閉じ込めてしまうことになりまして、変に化膿してしまいます。こういう傷にばい菌等を閉じこめてしまうような軟膏等の処置をせず、水道水等で傷の中および外の異物をしっかり洗い流し、子供用の透明な消毒薬で消毒して病院へ行かれるようにして下さい。創傷の処置は12時間以内に行なうのが一番よくゴールデンタイムと呼ばれています。

もうひとつ、指を誤って切って落としてしまった切断指というのがありまして、最近の医療ではこれを接着することができます(図17)。

 

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図17

 

 

 

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