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そういった中で運輸省としましても、経済活動の一層の効率化、活性化を図るという意味で、需給調整の原則廃止ということを打ち出したわけであります。

これに伴いまして、運輸行政の方向は、今後は、いわゆる事業の事前チェックから事後的チェックということに移っていくわけであります。

反面、安全や環境問題など市場原理のみでは完全にフォローできない部分が多々あるわけでありまして、特に安全の問題ですね、広い意味では危機管理もそうでこざいますが、最近では、JRの新幹線のコンクリート落下事故、また、西鉄バスジャック事件のようなケースにおける危機管理の問題等々、安全問題は常に運輸行政の基本であります。

また、地球温暖化の問題というのが大変顕在化してきています。21世紀には非常に大きな問題になってまいります。

さらに、バリアフリー化の問題、高齢者、障害者等にやさしい交通を実現していくことがあります。我々の生活になくてはならない交通というものを、誰もが利用できるようにという、そういった方向にも転換しているわけであります。

センターでも、「長崎県の旅客船バリアフリー化の促進に関する調査研究」ということを手掛けていただいているわけであります。ご承知のとおり2015年には4人に1人が65歳以上の高齢者になります。それからわが国には今でも、体に障害をお持ちの方が約300万人おられます。そういったご高齢者、あるいは障害を持つ方も障害を持たない方も、同等に生活して活動できる社会を目指すという、「ノーマライゼイション」は、もう全世界的な動きでありますし、わが国もそれに沿った行政を交通の分野でも展開していかなければいけないと思います。

特に離島航路というのは、離島の住民にとってはなくてはならないものであります。特に離島を多く抱えた長崎県について、船舶のバリアフリー化のあり方を研究していただくというのは大変時宜を得たいい調査だと思って、私共もその内容に大きな期待をもっているわけであります。

そこで、本研究に対する会長のお考え、交通バリアフリーに対する会長のかねてからのご持論、あるいはJR九州で取り組んでおられれば、どういう取り組みをされているのかを少しお話いただければと思います。

 

石井会長

私も、総合政策のできる国土交通省に、そのメリットを国民が大いに享受できることを期待しています。

それで、規制緩和と需給調整については大きな時代の流れがあると思います。

人の流れとか、ものの流れには、設備整備や、施設整備という避けて通れない公的な一面があります。それに、過疎地の支援の問題や環境問題は、国民の生活を新しい時代に適応した方向に誘導していくような性格があるから、国とか、自治体の政策と非常に関係が深いんだと思います。

しかし、自由競争が時代の流れですから、事業者も当然、ひとつの土壌の上で大いに競争できる努力をするというマインドが必要なのでしょうね。

それでバリアフリーの問題については、今年5月に「交通バリアフリー法」が成立して、高齢者や障害者の移動の円滑化対策はいよいよ実践の段階を迎えました。日本は事業者も経済優先で来た面があって、欧米に比べると非常に遅れています。ですから、これからは大いに推進していく必要があるんですよね。

それと、この3月に、交通エコロジー・モビリティ財団により、海の施設整備のガイドラインみたいなものがとりまとめられ、海上交通についてもバリアフリーのメニューが示されました。ですから、今後は、各地域の特徴にあったような、具体的な取り組みを前向きに行っていく時代に来ているんじゃないかと思います。

そういう意味で、離島とか半島が多い長崎県がパイオニア的な地域になるべきじゃないかと考えました。幸い自治体、海運事業者、それから造船事業者も積極的に協力してやっていこうという気運にありますんで、現実的な問題も踏まえた有意義な研究になってほしいと思っています。

 

 

 

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