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早速でございますけれども、発言の順番は私の隣から座っている順番にお願いしたいと思います。最初に花王の九州工場の大川さんから荷主代表として九州工場における物流の実態、その中でもJR貨物の位置付け、あるいはJR貨物さんに対する要望等がございましたら、まずお話しいただきたいと思います。どうぞ、よろしく。

 

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パネリスト

花王株式会社九州工場

地区サービスセンター

課長

大川勝正

(おおかわ・かつまさ)氏

昭和47年花王株式会社九州工場事務課入社、事務課係長、花王化粧品九州(株)課長、家庭品販売部門九州地区課長を経て、平成4年より現職。昭和20年生、福岡県出身、54歳。

 

大川 ただ今ご紹介いただきました、花王(株)の大川でございます。荷主代表とは大変おこがましいことで、お役にたてるかどうか本当に疑問に思っているわけですけれども、どうぞよろしくお願いします。

さて、花王におけるJRさんの利用状況ですけれども、輸送全体からの割合からしまして、花王の中の数量ベースで約10〜13%、金額から申し上げますと、約25%程度、距離で申し上げますとほとんどが600km以上の拠点の利用になっております。近年、この10年くらいはこのペースが定着しておりまして、JR貨物を利用する理由は3つありまして、1つは距離が長いということで金額メリットがある場所、2つめにはフェリー航路がないということです。3つめはロットが小さい。こういう3つの理由によって利用しております。

従って路線は関東圏、近畿圏からの下りの便で、西では九州の新門司、熊本、鹿児島、佐賀、長崎、佐世保、北は北海道方面といったものに限定されています。逆の九州から上りというのは全くありません。一部、設備上の理由というのもありまして、私共の拠点というのは、ほとんどがトラック専用のバースを作っている関係上、どうもJRコンテナでは余分の作業が現場で発生するということで、現場で嫌われる面もあります。また積載効率を追求すれば、詰め替え作業が発生することも多少影響しているんじゃないかなと思います。以上が利用状況であります。こういう状況を踏まえた上で、JR貨物さんに問題提起させて頂く前に、花王の製造業の動きについて少し触れておきたいと思います。

ご存知のとおり、わが社は昭和47年に北九州に進出してまいりまして、ちょうど27年になりますが、12月をもって九州工場を閉鎖いたします。それは流通拠点に衣替えさせるためのものですが、今、我々の業界は厳しい生き残りの競争を展開しております。しかも、いまだに店頭での売価が下がり続けております。したがって、コスト競争力をどうしても維持しないと、生き残れないということで、今盛んにやっているのは、集中化の効率でコスト低減を進めております。

過去には分散化で物流コストを抑えるということで、進出してきたわけで、今は集中化のコスト低減効果がそれを上回る状況になってしまったということです。

もう一方、技術革新による商品の小型化というのも大きく影響していまして、他の日本企業全体も同様の現象がどんどん進んでいます。

この結果、原材料を調達しようにも、コストに見合うものは地方から消えていきます。ますます都市圏に近い中央からの調達になってしまいます。

そうしますと、そこで製品を作ってローカルに運ぶ方が良いに決まっています。しかも全国的に、人余り、設備の過剰ということで、地方のメリットがどんどんなくなっているのが、実態じゃないかと理解しています。

この状況下で、企業の生産拠点の見直しというのは、整理集中化をますます加速させていくと思います。その後にくるのは結局、海外の生産拠点を含めた、グローバルな集中化で、地方の過疎化の促進、そして今以上にモノの流れが歪になります。結果、地域の経済力の格差というのは、どんどん開くんではないかと考えております。

一方、国の政治を考えますと、最近は選挙対策の施策にのみ明け暮れているというふうにしか思えないんですけど、相変わらず税金のばらまき行政、あるいは至る所での高コスト体質を促進させております。たとえは、各県に空港や場合によっては、大型埠頭、またJR関係でも、在来線というものが、赤字体質にもかかわらず、新幹線の建設、その他健康保険だとか、年金問題だとか、いろんな問題があるにもかかわらず、すべて先送り状況になっています。今日は政治のお話に来た訳ではありませんが、この辺に少し触れないと、後の問題にちょっと入りにくいのでご容赦をいただきたいと思います。こうした閉塞状態を打破する為には、戦略的な流通革新ということしかないんじゃないか。歪みの物の流れを放置することは、物流業界そのものを歪にし、高コスト体質をますます加速していくというふうに理解しております。だったら、どうしたら革新出来るか?大変難しい問題であります。

 

 

 

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