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だから、ずっと資本主義の発展を見ていきますと、まず、蒸気機関があって、その後、船、鉄道があって、それから自動車になっている。それと情報の流れでいいますと、まず最初は一部電話が入って、ラジオがあって、テレビがあって、そして今、先程皆さんで昼食をとりながら、いろいろお話をした時に、皆さんおっしゃっていたのは、やはり携帯電話の話でありますが、この携帯電話やインターネットを活用した情報の空間移動、ハイモビリティですね、これが劇的にしかも超低コストになってしまったということなんです。

だから、資本主義を発展させるということは、物の流れと情報の流れをいかにハイモビリティにするかと、安く速く大量に安全に、どこにでもスムーズに運び出していくのか。しかも、それそのものが産業になってしまうということですね。だから、インターネット時代には当然パソコンが爆発的に売れる。パソコンが爆発的に売れるから、半導体産業が成長する。半導体産業は九州に多いんで、今再び九州の工業出荷額は伸びつつある。当然携帯電話に使う半導体もそうでありますし、携帯電話の機器そのものも非常に伸びている。

けれども、携帯電話の時代に、自動車産業の時代と違うのは、もの作りの波及効果が、情報産業の時代は極めて小さくなった、弱くなったということは間違いないわけであります。それだけ、やはり情報産業の持っている低コスト性、情報産業の持っている空間を乗り越える力のすごさ、これが我々の生活、産業、企業のあり方を今、劇的に変化させようということが起こっているわけで、これは皆さんご存知のとおりであるということであります。おそらく通信コストはですね、1950年代くらいから比べると数百分の一位のコストに下がっているわけでありまして、おそらくもっと通信コストは下がっていく。しかもほとんどタイムラグが物の移動、人間の移動と違いまして、ほとんどラグがありませんから、時間的な遅れがありませんので、インターネットだとアメリカ、ヨーロッパまでおそらく15分から20分位で着いているようでありますけど、大量の文書がですね、瞬時に届くというわけであります。

昨年オランダの先生達と本を出すというんで、初めて英語で書きまして、インターネットでやりとりしたんですが、これ全部ただでありまして、論文そのものが瞬時に行ってしまうということで、むこうは夜でも、こっちは朝であるということで、いつでも送れるということで、このインターネットの凄さというのは、離れれば離れるほど、凄いということがわかってくる。

しかも資本主義というのは、どこにマーケットがあるかがよくわからなかった。あるいはマーケットはあるんだけれども、そこに持っていくのが非常に高くてですね、商売にならなかった。ところが今や、もしかしたらありとあらゆる物が商品になる可能性が出てきたということですね。例えば、絵描きさんがいて、昔は絵描きさんというのは最初の頃は、福岡だったら天神に来てですね、似顔絵を描いたりして生活してたんだけども、今やホームページ上に自分の絵を掲げてですね、私はこんな絵を描いている、この絵を買いませんか、と言ったら、実はアフリカの人がほしい人がいる、かもしれないわけですね。世界中の人に向かって情報の発信が出来るようになると、そこをつなぐ、要するに自分のマーケットがどこにあるかがわからなかった。いわゆるマッチングさせることが出来なかったものが、簡単に低費用でマッチングさせる可能性が出てきたということなんです。

資本主義のマーケットというのは実はどこにでもあるんだけれど、どこにマーケットがあるかわからないんで、とにかく数打ちゃあたる方式のテレビ広告をうってみるだとか、そういうテレビ広告うつということは大企業でない限り出来ないわけですね。あるいは新聞広告を、だれがお客さんかわからないから、まあ適当にうっているわけです。しかも高コストをかけて。ところがそういったやり方でない、新しい資本主義が生まれてくるということは、必ずしも大企業でない非常にユニークな企業が伸びていく可能性がある。非常に分散型の社会に入り込んでいく側面がある。その時に物流のあり方というのが大きく変わってくるんじゃないかという気がするわけであります。

おそらくこれから先は、大きな物が流れていくということはないんじゃないかという気がするわけですね。これはまだ、はっきりとはわかりませんが、日本の経済体質は公共事業体質が非常に強いということで、世界的な問題として取り上げられるケースが増えています。要するにGDPに占める土木・建設関連業種の比率が全世界平均の2倍あると。だから長期的には公共事業や住宅投資というのは、おそらく今の経済に占める比率からいうと半分位に減っていくと。ということは当然、そういう建設資材等の重量物を運ぶ仕事というのも半分くらいに減っていくという風に考えておいた方がいいんじゃないかという気がするわけですね。

 

 

 

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