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2] ダイヤ変更による既存貨物への影響

1]の検討に基づき、川崎〜日向・宮崎のフェリー航路のダイヤを変更する場合、現在同航路を利用している貨物への影響について検討する必要がある。

昨年度調査によれば、同航路の主要品目は、上りが農産品(野菜)、畜産品(食肉・ブロイラー)であり、両者で約7割を占めるとみられている。一方、下りは飼料、建材、雑貨、商品車等が主要品目であるが、上りと比較して貨物量が少ない。

これらの主要品目のうち、農産品は出荷翌々日の未明に卸売市場や量販店の流通センターに到着すればよいことから、その範囲内でフェリーの運航ダイヤを遅くしても利用可能であり、むしろ出発時刻が遅くなることにより、発着港から離れた、より広域からの利用が促進されるという効果が期待される。

一方、畜産品については、翌日夕方までに納品という条件を課す卸売業者等が多く、従来より約2時間遅く設定されている現行のフェリーダイヤでさえ、到着時刻が遅いという理由で、フェリー利用を取り止めた荷主もある。このため、さらにダイヤを遅い時間帯にすれば、フェリー利用から陸送へ転換する畜産品が、現在以上に増加する可能性もある。

また、現行ダイヤを前提として無人航送体制が構築されているブロイラーについても、ダイヤ変更による影響について慎重に検討する必要がある。

 

【食肉加工業者の事例】(A社)

仕向地別の出荷割合は、約7割が関東・関西向け、約2割が九州圏内向けである。関東向け貨物は、通常で1日当たり30トン、多い日で60〜70トンを出荷しており、日曜日を除く毎日、10トン車で全て陸送している。また、関西向け貨物は、通常で1日当たり30〜40トン、多い日で80〜90トンを出荷し、大阪までフェリーで輸送している。

関東向けについても、1999年まで、川崎〜日向・宮崎航路の枠を持っていたが、ダイヤ改正等により、契約更新に至らなかった。その要因として、新ダイヤでは、川崎の到着時刻が午後4時半であり、以前より1時間も遅い。着時間に1時間のロスがあると、配達可能件数も減ることになるので、販売先の卸売業者の到着時間指定が厳しい畜産物の性質から考えるとフェリー利用価値は減ったと言わざるを得ない。

近年は卸業者による着時間指定の条件が年々厳しくなっている。例えば午後3時に鹿児島を出た場合に、東京の着時間を翌午後1〜2時までに設定するといったことが当たり前になりつつある。これは運送会社間の競争における過剰なサービスの提供合戦の結果と考えられるが、現在検討されているリミッター装着による速度規制が本格化することを想定すると、運送会社はますます厳しい状況を迎えるのではないか。

卸業者側の納入時間が深夜まで可能であればフェリー輸送で対応できる可能性もある。たしかに最近は24時間荷受けに対応できる企業があり、当社のように大都市圏までの輸送距離が長い南九州から出荷する立場としてはありがたいし、こうした企業が多くなれば現行ダイヤでのフェリー利用も可能性として考えられるが、現状ではスーパーの加工センターなど一部の企業に限られている。

 

(4) 海上輸送の需給調整規制廃止への対応

2000年10月、旅客船事業にかかる規制緩和に伴い、フェリーにかかる需給調整規制が廃止され、内航海運も含めた海上貨物輸送は自由競争時代に突入した。

こうした状況にあって、赤字航路においては分社化によるコスト削減や優遇措置の適用により、航路の維持存続を図る動きがある一方、需要拡大の見込まれる航路においては、大型船を積極的に投入する動きがある。1999年12月に油津〜大阪〜東京に投入されたRORO船もこうした動きの一環として捉えることができる。また、2002年4月より、大分〜横須賀間を20時間(午前1時出港、午後9時入港)で結び、大型トラック約260台積載可能なフェリー航路が開設される予定である。

 

 

 

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