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(3) 海上輸送の利用可能性とダイヤ変更による影響

1] 海上輸送の利用可能性

これまでに述べたように、関東〜南九州間の特積みトラックの輸送においては、翌々日配送を維持できる範囲内で輸送スケジュールを設定できるのであれば、フェリー等の海上輸送が利用される可能性も十分にあると考えられる。実際、関東〜北海道間では特積みトラック事業者がフェリーを利用するようになっている(第4章 先進事例調査参照)。

ただし、現行の川崎〜日向・宮崎航路は、川崎出発が19時30分であり、21〜22時頃に出発する特積みトラック事業者の幹線運行にあったダイヤとなっていない。しかし、フェリーの出発時刻が23時台となれば、その際、相手側港湾の到着が翌日19〜20時頃となり、翌々日配送が可能であることから、関東〜南九州間においてフェリーを利用する可能性は十分にあるという回答も複数のヒアリング先から得られている。この場合、宮崎・鹿児島分が当面の利用対象となることから、両県で対関東の貨物量が十分確保できる大手の方が、利用に対して前向きの回答をしている。

 

【宅配便業者の幹線輸送の概要】(Q社)

海運利用の可能性はダイヤ次第と言える。現在、全体の7割が企業発の貨物であり、これらは集荷時刻が遅いほど好まれるので、ベースの出発時刻を早めるのは難しい。

 

【宅配便業者の幹線輸送の概要】(R社)

フェリー利用を考えると、貨物の需要という点では北九州方面との航路が望ましいが、瀬戸内海に入るとスピードが落ちてしまうという問題がある。熊本なら九州域内での立地はよいが、海上輸送が使えない。大分は海上輸送上の位置はよいが、航路網があまり充実していない。

宮崎へのフェリーは川崎出港が19:30であるが、トラックの出発時刻は22〜23時頃になるので、利用できない。もし、時間帯が遅くなれば、フェリーを利用する可能性は十分にある。現状の傭車の相場を考えると、傭車先の業者からみてもフェリー利用のメリットはあると思われる。あるいは、無人航送にする考え方もある。ただし、苫小牧航路が有明埠頭に発着するのに対し、宮崎航路は川崎発着のため、苫小牧航路と同じ23:45の出港としても、当店を22時頃には出発しなければならないだろう。

また、宮崎へのフェリーを利用するとすれば、宮崎・鹿児島の貨物が対象であり、熊本を入れてしまうと、熊本支店が対応できなくなると考えられる。

各荷主企業とも、労働時間は短く、営業時間は長く、という方向のため、集荷の時間が後ろにずれ込みがちであり、海運や鉄道の利用を促進するためには、顧客の協力も欠かせない。

 

【宅配便業者の幹線輸送の概要】(S社)

発荷の海上輸送利用については、21時の出発、翌日(一部、翌々日)の配送に間に合うダイヤ設定、具体的には23時頃の出発であれば、十分に利用可能であると考えている。ただし、欠航率の抑制など安定性の確保、アフターケアの質も条件となる。

 

 

 

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