5] 求貨・求車情報システムの導入に向けたトラック事業者等の動向
中小トラック事業者からは、求貨・求車情報システムの効果が認識され、大手の下請け構造を脱する手段として期待されているが、オークション形式の導入等により運賃下落が加速するという懸念も表明されている。
【トラック事業者の意見】(V社)
・大手物流業者の下請けの仕事も引き合いが多いが、自社で走るのと比較して不当に安い運賃を提示されるので、基本的に断っている。しかし、下りについては、大手の下請け並みの運賃でも受けざるを得ないことが多い。その目的地は宮崎ではなく、大阪、福岡などさまざまであり、基本的には宮崎に荷物がないことが要因である。
・関西方面への輸送の場合、大分港からフェリーを利用することが多い。この航路は朝6時に神戸に到着し、名古屋に8時頃までに着けるので使い勝手がよい。関東向けの貨物でも、大阪・神戸から一般道を走ることが多い。関東向けは翌々日到着となるため、高速道路を6〜7時間で走らなくても、一般道を12〜13時間で走れば十分間に合う。
・トラックの運賃水準は10年前よりも下落しているが、それでも運送業者が潰れないのは、中古車の活用、給与引き下げなどのコストダウンの努力を行っているからである。規制緩和でまだ事業者数が増加しており、競争が激化しているが、100台規模程度の中堅業者が最も苦労しているようである。
・求貨・求車情報システムに参加してみて、長距離トラックの事業者にはメリットがあると思う。
・類似のシステムでは荷主も参加し、運賃のオークションをやるというが、これによって、今でも低いトラックの運賃水準がさらに下落する恐れがある。その一方で、こうした仕組みがうまく機能し、大手運送業者の下請けを脱すれば、中間マージンがなくなり、中小運送業者の取り分が多くなる期待もある。
・業務にITを活用していく際、「セールスドライバー」という自覚を持った従業員教育が最大の課題である。また、「他社がやってくれるのなら、そこから仕事をもらえばよい」という事業者もあり、経営者も含めて教育の必要性が高い。
情報システム会社の意見では、中規模のトラック事業者には経営管理の十分でないところが多く、システム導入による効率化の余地が大きいが、経営者の危機感に温度差がある点が指摘されている。
また、近年事業化が相次いでいる求貨・求車情報システムも今後淘汰が進み、その際、信頼関係の構築された企業間のみにおいて付加価値の高い情報が交換されるシステムが生き残るとみられている。