第4章 奄美大島及び加計呂麻地域における観光活性化方策
奄美大島における総合交通ネットワーク構築にあたっては、質的に高い水準の交通ネットワークを形成するために、まずは交通需要の量的拡大が必要である。
交通システムの輸送能力及びサービスの向上は新たな需要を発生させることも確かであるが、本地域において先行的に、例えば航空機の大型化や増便等によって新規需要を誘発する図式をとることは、経営的な観点からするとかなり難しい。このため本地域においては、交通需要を発生させる地域振興策等の推進と交通供給サイドにおけるサービスのレベルアップとを同じ歩調で進めることが現実的であると考えられる。
ここでは、本地域の地域振興策の中で、重要な柱である「観光振興」について、その基本方向について検討した。
第1節 観光のマクロ動向と奄美大島、加計呂麻地域のポテンシャル
1. 観光のマクロ動向
平成12年版観光白書は『最近の我が国の旅行のパターンとしては、個人・グループ・家族旅行が好調で、観光地の行動としては、体験型レクリエーションが人気を呼び、これを加えて、エコツーリズムやグリーンツーリズムへの関心も高まっている』また、『旅行商品の低廉化「安」、近距離化「近」、短い日数「短」傾向が続く一方で、沖縄・奄美、北海道などへの遠距離旅行も好調である。このような動向の背景には、低価格商品の販売、官民一体となった積極的な観光キャンペーンと、航空運賃の自由化による航空機を利用した旅行商品への人気の高まり』と指摘している。こうした傾向は今後とも、余程大きな変動でもない限り続くとみて差支えないであろう。
政府は国民、特に都市住民の間に定着してきたグリーン・ツーリズムをさらに推進しようと「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」を制定している。さらに平成12年からは「国民の祝日に関する法律」を一部改正して「成人の日」と「体育の日」を1月と10月の第2月曜日とした。この2つの月に最低3連休が定着した。また平成14年度からは全国一斉に完全学校週5日制となる。
前出の観光白書では、従来「宿泊観光、レクリエーション旅行が最も多い月は8月で13.6%を占めていた。しかし過去5年間で比べると、1月、6月、8月が減少し、3月、10月、12月は増加しており、年間を通じた旅行回数の平準化が進んでいる」とのべている。こうした環境変化は観光産業の成長に弾みとなることが期待される。
2. アンケート調査等からみた奄美大島、加計呂麻地域のポテンシャル
(1) 奄美大島に関するアンケート結果
東京都、大阪府、福岡県、鹿児島県の住民を対象とした「奄美大島の観光に関するアンケート調査」によると奄美大島への来訪意向は、奄美大島に過去に来訪経験のある人で77.8%、来訪経験のない人で83.8%と来訪経験の有無に関わらずきわめて高い。
奄美大島は「自然が豊かな島」「珊瑚礁や海岸線が美しい島」としてイメージされてはいるが、観光の情報発信は不充分で、「観光地として発展していくために必要なもの」として「奄美大島の観光地やアクセスなどの十分な情報提供や」をあげる人が71.1%と最も高い。なお、同質問の回答結果において「サンゴの海や砂浜など貴重な自然を維持すること」が59.6%と第2位となっており、本土住民は奄美大島に対して「サンゴ・海・自然」を期待しているのである。