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舷門のコーミング段差については、スロープ等により対応を行うことを検討する。「フェリー椿」「フェリーなみじ」の場合、コーミングは23cmである。ここで、移動円滑化基準において、旅客施設で許容されている1/12の勾配のスロープの設置を想定すると、276cmの直線距離が必要となる。しかし、「フェリー椿」「フェリーなみじ」の一般配置図をみると、1階出入口は車両甲板と同レベルであり、旅客の出入口付近において船舶内部に276cmのスロープを設置するためには、スペースの確保が難しい。このため車両甲板から客室への移動経路にも対応が必要である。

このため、車いすに乗ったままでの補助なしでの乗船が難しく、乗組員等の人的サービスによる対応が必要である。

 

3] 船内のバリアフリー化

「フェリー椿」「フェリーなみじ」は、出入口と客室とが異なる階層にあるため、客室階へは階段を利用して移動する。また、諸施設間の移動時にも、段差が発生している。特に、トイレについては、段差が多い上、和式のため、車いすでは利用できない。

 

■昇降装置の設置

車いす用階段昇降機は、100Vもしくは200V電源で斜度50度まで対応できるものがある。設置幅については、120〜140cm程度必要であるのに対し、「フェリー椿」の階段幅は約150cm(一般配置図に基づく)程度確保できるため、物理的には対応可能である。

ただし、船舶安全法に抵触しないか確認する必要がある。

 

■基準適合客席の設置

両船には、一等、二等および特等客室があり、いずれかの箇所に基準適合客席を設置する。特等客室については、一等客席、二等客席、売店、電話器や遊歩甲板など主要施設がある階層よりもさらに上層階に設置されているため、基準適合客席は、一等もしくは二等席客室のうち、売店や電話機、トイレ等に近い入り口付近への設置が望ましい。また、定員数から見て、20席程度必要である。

なお、現在の客席は座席であるが(いす席は遊歩甲板に設置)、車いす利用者が床面とほぼ同レベルの客席へ移動するには困難が伴うこと、また、視覚障害者については、他の乗船客にぶつかったり、客席入り口に靴の判別が難しいなどの問題があるため、一部いす席とすることが望ましい。

また、あわせて基準適合客席付近に、車いすの設置スペースを設置することが望ましい。

 

■船内の段差の解消

両船は、船内の段差が多く、これらについてはスロープ等の設置により改善することが望ましい。こうした段差の多くは数cmにとどまることから、旅客施設のスロープの勾配を1/8程度とした場合には、スロープの設置は可能と考えられる。

 

 

 

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