(2) 市町村
市町村においては、住民に最も身近な行政機関として、地域の実情に即したバリアフリー化の実現に向けて、各関係主体の取り組みを牽引・調整していく役割が求められる。
これに関連して、交通バリアフリー法では、市町村は、区域内の「重点整備地区注)」について重点的かつ一体的なバリアフリー化を進めるため、「移動円滑化基本構想」を作成することができるとされている。各市町村は地域の実情を考慮し、必要に応じて旅客船ターミナルを含む地区を重点整備地区に設定して「移動円滑化基本構想」を作成し、重点的かつ一体的なバリアフリー化を推進していくことが期待される。
また、市町村が旅客船ターミナルや周辺道路等の整備・管理主体となる場合には、既存施設も含めてそのバリアフリー化に積極的に取り組んでいくことが求められる。
注) 「重点整備地区」は「特定旅客施設」を中心として設定される一定の要件を満たす地区であり、「特定旅客施設」は1日あたり利用者が5千人以上であることが基本であるが、それ以外でも一定の要件を満たし必要性が特に高いと認められる施設が該当する。
(3) 長崎県
長崎県においては、海上旅客輸送の大半の航路が複数の市町村にまたがることから、そのバリアフリー化に際して、関係市町村と協力して、広域的な観点から各関係主体の取り組みを牽引・調整していく役割が求められる。さらに、他県にまたがる航路に関しては、当該県・市町村との調整機能も求められる。
また、各事業者や市町村等の取り組みを支援するため、公的支援制度の一層の拡充を図っていくことが期待される。
さらに、国レベルでの情報を事業者・市町村等へわかりやすく提供するとともに、県内のバリアフリー化について、その進捗状況を把握して利用者への情報提供を行ったり、事業者・市町村や一般市民等への意識啓発を行っていくことが求められる。
一方、港湾管理者(佐世保港を除く)としての立場からは、旅客船ターミナルを中心とする港湾のバリアフリー化に向けて、関係市町村と連携を図りつつ、積極的に取り組んでいくことが求められる。
(4) 国等
国においては、海上旅客輸送を含む交通バリアフリー化の促進に向けて、公的支援制度の一層の拡充を図っていくことが期待される。また、国が厳しい財政事情にあること等に鑑み、交通バリアフリー化の促進に向けた財政的な支援が期待されている。
また、低コストで安全性確保とバリアフリー化の両立が図られるような船舶の実現に向けて、試設計の実施や技術開発の促進を図るとともに、船舶安全法等と同様に、交通バリアフリー法についても各地域レベルでの運用体制の整備が求められる。船舶の構造基準等については、交通バリアフリー法に基づく「移動円滑化基準」との整合性に配慮しつつ、適切な見直しを行っていくことが求められる。