(4) バリアフリー化に関する情報提供と意識啓発
(3)に関連して、長崎県の海上旅客輸送におけるバリアフリー化の状況に関する情報を利用者が必要に応じて入手できるようにするとともに、高齢者・身障者等によるバリアフリー化された航路の利用を促進するため、各関係主体においては、各船舶、港湾等のバリアフリー化の状況を冊子、ホームページ等の媒体を通じて高齢者・身障者をはじめとする利用者に提供していく必要がある。
また、同時に、バリアフリー化の重要性や高齢者・身障者等への支援(介助)のあり方に関する一般市民への意識啓発を行っていく必要がある。
(5) 法制度の整備と技術開発の促進
船舶のバリアフリー化にあたっては、船舶の安全性確保のための法規制とバリアフリー化に対応した構造・設備が相容れない場合があること、バリアフリー化への対応に伴って、実質的な同型船であっても換算トン数の増加により建造費をはじめとする各種コストが割高となることなど、法制度に関係する課題が存在する。これに関して、国においては、必要に応じて適切な見直しが求められるとともに、長崎県の海上旅客輸送に関係する各主体においては、長崎県の特性を踏まえ、望ましい法制度のあり方について、さまざまな機会を通じて国への意見・要望をあげていく必要がある。
また、低コストで安全性確保とバリアフリー化の両立が図られるような船舶の設計や新技術の開発を促進していく必要がある。さらに、桟橋や接岸中の船舶全体を覆う構造を持ち、風雨にさらされずに乗下船が可能となる全天候型旅客船ターミナルの開発についても、貨物船向けには類似のものがすでに存在していることから、検討に値すると考えられる。
4. バリアフリー化促進に向けた各関係主体の役割
(1) 旅客船事業者
旅客船事業者においては、船舶の新設時に交通バリアフリー法に基づく「移動円滑化基準」への適合が求められるが、バリアフリー化による需要拡大の効果も踏まえつつ、利用者の視点に立って、既存船舶も含めたバリアフリー化に積極的に取り組んでいくことが求められる。
その際には、施設整備によるハード面だけでなく、職員(船員・地上係員)の研修、対応マニュアルの整備等により、ソフト面での対応も併せて進めていく必要がある。また、船舶の建造にあたっては、発注先選定にプロポーザル方式を採用するなど、造船業界の技術開発や創意工夫を促進することも期待される。