日本財団 図書館


そこでは現在及び将来の世代の人間が健全な環境の恵沢を享受することの必要性が指摘され、リサイクルの促進、民間団体との連携の重要性等がうたわれている。環境基本法に基づき、1994年には政府が環境基本計画を定めている。1997年には環境影響評価法が成立し、1999年から施行されている。環境影響評価の実施に際しサンゴ配慮することの重要性が私的されるようになってきており、干潟・藻場・サンゴ礁は沿岸部において保全すべき自然へと考えられている。

 

(3) 港湾や海岸における環境への対処

日本には「国際海上輸送網又は国内海上輸送網の拠点となる港湾その他の国の利害に重大な関係を有する港湾」と定義される重要な港湾が128存在する。港湾の整備と運営に関する基本的な法律である港湾法は2000年3月に改正された。そこでは、「環境の保全に配慮しつつ、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図る」と環境の保全に対する港湾の姿勢が示されている。

日本の海岸線の総延長は約3万5000キロメートルと長大である。従前、「津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護する」ことが基本とされていたが、1999年5月に海岸法が改正された。そこでは「津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図る」ことが基本姿勢とされた。

港湾法、海岸法の改正にみられるように、環境保全に配慮し、失われた自然の修復を図っていくことは、港湾及び海岸分野の基本的な姿勢となっている。

 

(4) 干潟・藻場・サンゴ礁の保全と環境修復

陸域から海域に遷移していく区域は海岸エコトーンと呼ばれている。海岸エコトーンでは潮汐に伴い水位が変化し、波浪や潮流により地形が変化する。また海水と陸水が混ざり合い、塩分の濃度勾配ができる。栄養塩も陸域から流入し、輸送される。このように不安定かつ厳しい環境の海岸エコトーンには様々な生物が集中的に分布し、生産力が非常に高くなっている。

干潟・藻場・サンゴ礁は、海岸エコトーンにある代表的な生物生息空間である。表3-3にはOdumが推定した世界の主要生態系の純生産力が示されている。干潟やサンゴ礁が位置する「汽水域・サンゴ礁」の単位面積あたりの一次生産力は「沿岸」の10倍に相当する高い生産性を示し、陸上で最も高い生産力を示す「亜熱帯・熱帯雨林帯」に匹敵する生産性となっている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION