(1) 沿岸域の自然と利用
日本は世界的にみても最も沿岸域が高度に、稠密に利用されている国の一つということができる。38万平方キロメートルの国土に約1億2千500万人の人が住んでおり、国土全体での人口密度は1平方キロメートル当たり、約320人であるが、東京、大阪、名古屋等の大都市が位置する沿岸平野の人口密度は1平方キロメートル当たり、2000人以上となっている。沿岸域には工業地帯も立地し、人口の集中する都市が形成されている。
日本の自然に着目してみると、日本は山岳部が多く、平野の少ない国である。平野が国土に占める割合は約25%にすぎない。沿岸平野には港が整備され、埋立によって土地が造成されている。海岸には台風や季節風に伴う風浪が来襲し、地震、津波、高潮等の自然災害が発生する。また東京、大阪、名古屋等の大都市は、東京湾、大阪湾、伊勢湾等の閉鎖性の内湾に面する臨海部に位置しているため、内湾の環境保全に関心が持たれている。
表3-2に東京湾とサンフランシスコ湾における自然と利用に関する指標の比較を示している。水域面積、流域河川流量、埋立面積はほぼ同程度である。流域人口は、東京湾がサンフランシスコ湾の約3倍、流域人口密度は約60倍となっている。このことから、東京湾においては極めて稠密な開発・利用が行われており、環境に対する負荷も大きいことがわかる。
注) *:内湾部、**:カリフォルニア州
出典:総合的沿岸域管理について、1997.11、磯部雅彦
(2) 沿岸域域の環境保全
日本の経済発展の過程において臨海部の開発は大規模に行われたため、日本においては海洋の汚染等の公害問題が発生した。しかしながら法律の整備、技術の開発、環境保全への資金の投入等の対策を取るという手法により、より良い環境を作るための努力が継続的に行われてきた。1967年には公害対策基本法が公布され、1970年には14の公害対策関係法案が成立している。
近年における環境関係の法制度の整備には目覚しいのもがある。1993年には環境基本法が公布された。