・照葉樹林都市に住む誇り:自治公民館活動−住民参加
これらの活動、事業により町に魅力を感じた人、自然志向の芸術家・職人あるいは農業従事者を受け入れ、定住させている。さらに綾町の発信する「照葉樹林のまち」のプラスイメージは多くの観光客を招き入れ、有機農産物の販売量が増大している。徹底して「照葉樹林」のロゴを冠することで「ほんものの自然・貴重な物を大切にしている」とのイメージを醸成することに成功している。「演出」の巧さの成果の面もなくはない。
3] 自治公民館活動
自治公民館は、これまで行政の下請的な役割をしてきた区長制に代わって設けられたものである。町民の自治意識高揚がその目的であった。各地区にあり、館長は自主的に決められ、地区の行事、行政への対応等も区民全員による総会か役員会によって決められる。全町の公民館が集まって自治公民館連絡協議会を結成する。この協議会の決定には行政も配慮することになっている。もちろん協議会の運営に行政は関与できない。いわば、町の政治への住民参加の確かな道が用意されている。
4] 綾町の有機農業
a. 経緯
「町民の健康を守る」という考えから、自治公民館を中心に一坪菜園運動として始められた。自家消費が趣旨であるから少量多品目栽培であったが、余剰が生じ、その販路を町で開拓した。それが「青空市場」で、安全な農産物を販売するということが評判になった。
b. 有機農業の推進の取り組み
有機農業を推進するために町では「綾町自然生態系農業の推進に関する条例」を制定し、認証制度も作っている。認証制度は綾町の有機農業の信頼性を維持する上で欠かせないもので、まず土の状態の検査そして認証からはじめ、金銀銅のランク付けを行っている。その一方で液肥や堆肥の工場を設置し、有機肥料を無料または低価格で農民に提供し有機農業を支援している。
生産物は「ほんものセンター」で販売できる。ここには誰でも生産物をおくことができる。また宮崎県に設けたアンテナショップでの日曜市で販売するほか生協と契約している。
c. JAの支援
JAの組合員登録は427戸、1,356名で全農家戸数の69%。専業農家は220戸。完全有機農業を指導している。技術面は開発センターが担当している。町営の育苗施設で育てた作物の苗や種子を町民2,777戸に配布している。また、1年間の取引計画をJAがたて、農家に栽培を委託している。生産原価をベースにした価格保証がされているので、農家は安心して農作業に打ち込め評判はいい。