(4)綾町(宮崎県綾町)/<写真III-13〜18参照>
・調査日:2000年11月17-20日
・参加者:廣井敏男、木内正敏、早川直美
・応対者:稲井一郎氏(綾町南麓公民館長、綾町自治公民館連絡協議会会長)、向井好美氏(綾町有機農業開発センター所長)、浜川義人氏(綾町有機農業開発センタ農政顧問)、福留清人氏(綾町役場企画財政課長)、郷田美紀子氏(薬剤師、前町長長女)、田淵民雄氏(農民)
1] 綾町の概要
宮崎県綾町は、九州中央山地国定公園に町域の一部が含まれる山間地である。町面積9,521haのうち森林面積が90%を占め、農地は僅か7%、宅地に至っては2%弱にすぎない。森林のほとんどは国有林で、照葉樹林によって占められている。人口は7,440人(1994年)。これまでこれといった産業のない町は、前町長の言葉を借りれば「夜逃げ」が名物の貧しい町であった。一貫して人口減が続き過疎地の指定を受け、辛うじて町を維持してきた。
綾町が変わったのは、郷田実氏が町長に就任してからである。町長がリーダーとなってすすめてきた活性化事業が町の姿を一新した。いま、町は「照葉樹林都市」「自然生態系農業の町」「手作りの里」「都市と農村との交流・共生の町」等いくつもの顔をもち多くの人を引きつける町に見事なまでに変身を遂げてきている。その努力は内閣総理大臣の「ふるさとづくり大賞」、国土庁長官の「過疎地域活性化優良事例町村」等多くの表彰で報われている。勿論人口も微増に転じている。綾町の変身が照葉樹林の保護活動から始まったことは極めて示唆的である。
2] 綾町が進めている事業
綾町が進めてきている事業を概略整理すると以下のようになる
・照葉樹林そのものを活用して:樹林見学用の世界一長い吊橋照る葉大橋の建設、照葉樹林館、九州中央山地国定公園の指定、照葉樹林マラソン、日本の自然百選、森林浴の森日本百選
・照葉樹林綾川の水を活用して:天然アユ、アユの養殖、日本の名水百選、清冽な水のイメージ
・照葉樹林の空気:青空の町、星空のまち指定
・照葉樹林の町の自然・文化:綾城、世界一大きな花時計、宿泊観光施設
・照葉樹林焼酎文化:焼酎雲海の製造、地ビール、地酒、ワインづくり、酒仙の森
・照葉樹林・自然生態系農業:自然生態系農業と認証マーク、ほんものセンター、有機農業の町のイメージの定着
・伝統工芸の町:手づくり工芸の里、工芸作家の工房
・馬の産地:乗馬クラブ