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・朝日町エコミュージアム協会は、平成12年3月に発足した特定非営利活動法人で、現在は理事11名、正会員25名、賛助会員5名(団体)で組織されている。事務局は「創遊館」内にあり、エコミュージアムに関する普及事業、案内人養成講座、ボランティア養成講座、寺子屋事業、運営受託事業等を実施。従来のエコミュージアム研究会とは別組織であるが、法人であるがために小回りがきかないという問題を抱えている。また、本来はエコミュージアム事業推進のための中心的な役割を担うものと期待されていたが、実際には思惑通りに進んでいないのが現状である。

b. 事業の現状と課題

・朝日町におけるエコミュージアム事業への取組みは、研究会の前身であるナチュラリストクラブが自然回帰のひとつの手法としてエコミュージアムを取上げたのが始まりで、当時は「田舎の子どもほど自然を知らない」という現実を見据えたうえで「田舎の空間で何ができるか」、「大人が楽しめば子どもも楽しめる(きっかけを与える条件づくり)」という発想から、「身近なところにエコミュージアムはある!」と気づいたのが出発点であった。

・朝日町流のエコミュージアムを模索するために、エコミュージアムを一から学び、フランスにも視察に出かけている第3次朝日町総合開発計画では、エコミュージアムの考え方が抽象的であったために町民の誤解を招いた。また、町長が変わった際にエコミュージアムの推進とは異なった方向性が打ち出されたが、これは外圧によって打ち消されたという経緯がある。いずれにしても、エコミュージアムの考え方を町民に浸透させるには「足元から地域を見直そう」という取組みが必要であり、地元の人たちが直接かかわれる場としてシンポジウムの開催が継続されているなかでも旧宮宿町、旧大谷村、旧五百川村の三つの地域におけるシンポジウムは、それぞれの地域文化の特色をテーマとした点が注目される。

・運動の発足以来12年が経過したが、この間における町民意識の変化については、それぞれの人がさまざまな立場で活動を始めているという点において、エコミュージアムの基本的な考え方が次第に浸透してきているものと考えられる。昨年町が実施したアンケート調査では、700人の対象者のうち約2割の町民がエコミュージアムに関心があると答えている。ただし、町民の意識と行政側の意識に隔たりがあるのも事実であり、住民サイドではより生活に密着した対応を望む声が高いようである。

・これまで朝日自然観に20億円、創遊館にも20億円が投資されているが、利用者は確実に増加している。今後の生涯教育や社会教育を考えると、それらが地域づくりとして定着していく必要があり、さらに学校関係者を研究会のメンバーに加えることで学校教育におけるエコミュージアムへの取組みも期待できる状況が生まれてきた。

 

 

 

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