(3)滑川町エコミュージアムセンター(埼玉県滑川町)/<写真III-5〜6参照>
・調査目:2000年8月29日
・参加者:池谷文夫、石川正行、坂本卓也、早川直美、三上晃朗
・応対者:赤井氏(財団法人埼玉県生態系保護協会)
滑川町教育委員会関係者(センター職員)
1] 滑川町の概要
・東京から60km圏に位置し、面積29.71km2、町域の6割を標高140m以下のなだらかな丘陵地が占めている。現在も国営の武蔵丘陵森林公園に代表される豊かな里山の自然がのこされた町である。
・町の中央部を流れる滑川及び南部の市野川、さらには複雑な谷津の地形から、中世には多くのため池が造られたといわれ、現存する約200ヵ所の沼(ため池)は関東地方において最も濃密な分布地帯となっている。
・第三次滑川町総合振興計画では、「谷津の里づくり事業」の一環として、谷津の整備活用を図ることが盛り込まれている。
2] エコミュージアムセンター
a. センターの役割と機能
・この施設は、「滑川町の貴重な財産であるため池文化や里山文化の機能の再生を図り、積極的に活用してゆくための交流や活動の場となる拠点を提供する」こと、「町のシンボルであるミヤコタナゴと共存していくための、保護増殖・野生復帰等の課題に具体的に対応していく」ことを推進する役割を担い、天然記念物整備活用事業におけるソフト面での機能の強化と充実を図ることが主な目的とされている。
・主な機能としては、ミヤコタナゴの保護増殖、展示、研修、ボランティア活動団体の支援などがあり、1999年度から国の緊急雇用特別交付金事業として「エコミュージアム整備支援事業」が実施されている。
b. センター施設の管理運営
・施設には、ミヤコタナゴ担当及びエコミュージアム担当として2名の町役場職員が常駐しているほか、教育長が所長を兼務。そのほか嘱託の社会教育指導員が数名勤務している。また、期限付きの緊急雇用特別交付金で確保した「エコミュージアム整備支援事業」のスタッフも非常勤で多数働いている。
・基本的な運営については、年に2、3回開催される運営委員会により議決される。メンバーは10名のボランティアによって構成され、文化庁及び埼玉県の関係者もオブザーバーとして参加している。
c. 天然記念物ミヤコタナゴ整備活用事業
・1974年に国の天然記念物に指定され、滑川町では1985年に町内のため池から再発見された。1988年より1990年にかけて町内全ての水域を対象に悉皆調査を実施した後、1992年に文化庁の許可を得てさいたま水族館よりミヤコタナゴの里帰りが実現。その後1994年に役場庁舎内において人工繁殖に着手し、1996年の「タナゴ館」完成に伴い、飼育増殖の機能を「タナゴ館」へ移転した。