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所沢市では、農業を理解する目的で、土作りにはじまって、苗の植え方、除草、収穫など年間を通した体験学習を市民講座として実践している。

k. 市民農園の開園(周辺市町)

どの市町村においても実施しているものに、市民農園がある。公共の水場や農機具置き場などを設けるなどして、およそ20から30m2を貸し出すというものであるが、人気が高く、どこでも応募が多いときく。一般市民の農業への関心は高まりをもっていることが理解できる。

(4)まとめ

以上、雑駁ながら、丘陵周辺の農業の過去から現代までの様子を述べたが、調査成果を十分に伝えきれぬ部分も多い。特に住民と農業者とのパートナー型の取り組みについては紹介する程度に留めた。いずれ、丘陵周辺の農業の展望を踏まえ報告する。

以上の報告からは、丘陵の周辺では地域を異にしても、過去・現在、直接・間接の違いはあるが、狭山丘陵との関わりの中で農業が展開されてきたことが理解できた。北麓では丘陵の日陰を避けた集落配置や日陰を利用した茶や桑の栽培、南麓では陽だまりの集落形成やみかんなどの果樹栽培、多摩湖・狭山湖の霧が良質の茶栽培を可能ならしめたこと、丘陵の樹木は堆肥資源や燃料資源になったこと、丘陵の存在が障壁となって北麓は都市化が緩やかになり専業農業が今も可能なことなど、挙げれば切りがない。狭山丘陵は、時には規制とも効果ともなりつつ、周辺の農業を形づくってきたといえる。

さて、平成11年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」はそれまでの「農業基本法」にかわる21世紀の日本の農業の目指す方向を示した、いわば日本の農業の憲法と言える法律である。この法律の基本理念は4項目からなる。1に食料の安定確保が挙げられる。日本の農業自給率が41%(平成12年度)という低下の脱却を目指すものである。2に挙げられるのは多面的機能の発揮である。農業の持つ国土保全・水源かん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面的機能は国民の生活や経済に寄与するものであり、十分・適切に発揮させなければならないとする。3は農業の持続的な発展があげられる。農業の自然循環機能を維持・増進させ、農業の持続的な発展を目指そうとしている。4に農村の振興が挙げられる。持続的かつ多面的機能が発揮でき、かつ農業が持続的に発展されるよう、農業生産条件、生活環境の整備や福祉向上を図らなければならぬとされる。都市化の進む狭山丘陵周辺の農業においても、いや都市化が進む地域だからこそ、基本法の理念は生かされるべきであるといえよう。

狭山丘陵エコミュージアム構想の中で農業を考える場合、こうした基本法の理念は踏まえなければならない理念である。狭山丘陵と農業とが影響しあう特性や規制、都市化という現実のマイナス・プラスの面も踏まえつつ、今後、構想の中で農業をどのように位置付けるか、さらに調査を展開し、かつ実践をも持って研究を重ねたい。

 

 

 

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