日本財団 図書館


b. シクラメン街道(瑞穂町)

瑞穂町の長岡地区はシクラメン栽培が盛んである。国の推進してきた第2次構造改善事業を受けて、農業振興地域の指定(昭和48年)を受けたのをきっかけにして、長岡地区の農業者8軒が新たな農業振興策として実施したのがシクラメン栽培であった。昭和50年に、東京都の指導を受けながら、農事組合法人を組織しシクラメンの温室団地を設置した。それまで花卉栽培すらまったく行われてなかった地域であるが、現在ではこの地域をぬける岩蔵街道はシクラメン街道と呼ばれるほどに発展しているし、現在では都内でも優良農業振興地域として評価が高い。すでにこのシクラメン栽培は四半世紀を経過したものになっており、後継者も育ち次世代にバトンタッチしている農家がほとんどである。瑞穂町の農業を紹介しようとする場合、見過ごすことができない、生き生きとした農業地帯である。第2次構造改善事業で新たな取組みをした農業が脈々としかも経済性の高く、四半世紀も継続・発展し続けている例は全国的にも少ない。

c. 蔬菜の共同出荷(所沢市)

戦後の農業の中で、首都圏に近いというメリットが生かされ発展したものが、蔬菜類を中心とした生産活動である。昭和30年代の経済成長期、ことに東京オリンピックで、東京との自動車交通網が整備されると、鮮度を要求される蔬菜類は、数時間で東京の市場に運搬が可能であることから発展する。かぶ・ほうれん草などの鮮度がもっとも勝負となる。これらの野菜が多く作られるようになる。はじめは、これらも個別に東京の市場に出荷するという方法がとられていたが、農協などが関わり、選別・規格が統一され、共同出荷の道が開かれていく。ことに狭山丘陵の周辺では、所沢市や入間市のように現在でも大規模な農地を持つ地帯では、生産に誇りを持って出荷する農業者が多い。また、近年では、農協にとどまらず、数軒の農業者が出荷組織をつくり、市場専門の輸送会社を通して市場に出荷する例も多い。

近年の生産物を所沢市の資料でみると、平成9年現在の資料であるが、里芋4,110t(県内生産1位)・ごぼう1,420t(県内1位)・さつま芋971t(県内2位)・大根4,300t(県内3位)・ほうれん草3,500t(県内3位)・かぶ2,600t(県内4位)・人参3,200t(県内4位)とある。

共同出荷や選別は、農業者とその経済を高め、経営意識を高めていった。

ちなみに、過日東京の亀戸の青果店での聞き取りでは、所沢やその周辺の野菜は鮮度といい形といい評判がよい。とくに里芋は飛ぶように売れる。その店ではその日1キロ600円で販売されていた。ちなみにその日里芋を出荷した農家は10キロ約4,000円だったという。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION