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・公園に売却してしまったから仕方ないが、もう切り時を過ぎてしまって、あれじゃ太くなりすぎだ。だいたい幹の根本で直径10cmから15cm程度で切るのがいいね。薪につくりやすいし、鋸でも切りやすい。背丈もそんなに高くはないし、枝もそんなに張っていないね。背丈が高いのはアカマツぐらいだったね。だからヤマの中は明るかった。(東村山市廻田地区)

c. 建築材や道具としての利用や販売

落葉木は落ち葉の役割だけではない。クヌギやクリは建築や土木にも活用されてきた。またヤマザクラの皮やエゴノキやニワトコは道具の一部の材料として利用された。また、雑木林にはアカマツが多い。松葉は堆肥にもいいが、それ以上に建築材として、意識的に育てられてきたものである。建築材としては梁材や湿気の多い土地の土台杭や河川の護岸を固める杭として建築や土木に、必要とされてきた。丘陵の木は多様性を持っていたし、また木はそうした価値があるため、意識的に育てられてきたものであったことが理解できる。

・丘陵には、ナラやクヌギの他にアカマツが多くあった。戦前に養蚕を盛んにやっていた頃があったが、不況になって絹の値段がずいぶんと下がって、かなり生活に困ったことがあった。そのとき、丘陵に所有するヤマのアカマツを売ったと聞く。値段は分からないが、ずいぶんと生活を助けてくれたと聞く。アカマツや丘陵の尾根に近い側に行けばいくほど、落ち葉が堆積しにくいから、肥料分が少なく育ちは悪いが年輪の詰んだいい建築材が切り出せたときく。(東村山市廻田地区)

・松は梁に、クヌギは床下の大挽に、クリは土台に使った。建て替える前の草葺き家の材料はほとんど丘陵の材木だったと聞いた。昭和30年の終わりの頃だったが、松やクリはないかと土建屋から尋ねられたことがある。あいにく、もう自分のところではヤマはもっていなかったから役にはたたなかったが、土建屋の話だと松は基礎杭に使うし、クリはトロッコの枕木に使いたいと言っていた。確かにクリは今でも枕木には使うらしいね。(武蔵村山市中藤地区)

・ヤマを放置しておくとバヤ、特に篠が多くなる場所がある。ヤマは掃けなくなるし、一度そういうヤマにしてしまったら、元に戻すには10年はかかるだろう。もっとも、太い篠は使い道がある一つは畑の作物の支柱として、もう一つはカゴやがザルをつくる材料として、篭屋が刈り取っていったことがあった。(入間市宮寺地区)

・エゴはまっすぐに伸び素性がいい、昔は杭や棒打ちの板の代りに使った。自分では、使ったことがないが、ヤマでニワトコの太くなったのを切っている人を見たことがある。金槌の枝には粘りけがあっていいと大工が言っていた。(武蔵村山市三ツ木地区)

・ヤマザクラの皮を剥いで買っていく人がいた。箕をつくるのにフジと一緒に織り込むらしい。丈夫になるという(瑞穂町元狭山地区)

 

 

 

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