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起振力はプロペラ軸、軸受を介して船体に伝えられる「ベアリングフォース」と、流体を介した圧力変動としてプロペラ近傍の船体に伝えられる「サーフェイスフォース」の2種類に分けられる。

ベアリングフォースは、プロペラが不均一な流入速度の中で一定回転で作動する為、翼の位置により翼素への入射角が変化し、翼の発生する揚力と抗力が1回転中に変動することによって発生する。揚力の変化の軸方向成分はスラスト変動として、揚力と抗力の変化の回転方向成分はトルク変動としてプロペラ軸に伝えられる。更にスラスト変動からモーメント変動、トルク変動から横力変動が誘起され、このモーメント変動、横力変動は上下方向の軸と水平方向の軸にそれぞれ作用する、これらの変動力により船体の前後振動、上下振動、横振動等が発生する。

サーフェイスフォースは、プロペラ翼が回転し船体後方を横切る事によって発生する周期的な圧力変化を原因としている。この圧力変化は翼厚によって排除される水の容積、揚力を発生させる翼面上の圧力、キャビテーション発生によって排除される水の容積によって誘起される。これらは、均一な流れの中で作動しているプロペラでも発生するが、これ程強いものではなく、現実に船尾振動の原因となるのは、不均一流中で発生する非定常キャビテーションによる強い圧力変動である。プロペラの翼素への入射角は一回転中でかなりの幅で変化するのでキャビテーションは、入射角の大きい位置で成長し、入射角の小さい位置で縮少または消滅するという急激な容積の変化を生じ、強い圧力変動をもたらす。この圧力変動により船底外板に生ずる力をサーフェイスフォースと呼び、主に船尾上下振動の原因となる。

 

5) スキュープロペラと起振力

スキューを大きくして、プロペラ起振力を小さくする原理は、一言でいえば変動力の原因となる現象が各要素で同時に起らないようにすることと言える。

ベアリングフォースに関しては、流入速度の最も小さい船体中心部を通過する時間が半径方向にわたってずれるようにし、揚力、抗力の変化のピークが同一時間に集中しないようにすることである。

サーフェイスフォースについても同様に、船底のある位置を通過する時間を各翼素でずらせることにより、翼全体の発生する圧力変化が小さくできる。更にキャビテーションが通常翼に比べ、翼弦方向に細長く広がるため非定常キャビテーションによる急激な圧力変化の増加を弱める効果がある。

 

 

 

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