以上がディーゼルエンジンにおいて燃料の噴射から燃焼が完了するまでを大きく分類したものである。このうち、熱効率、最高圧力および排気温度等機関性能に大きく影響を与えるものは、着火おくれ期間と後燃え期間である。この2つに影響を与えるものを更に細く分類すると次のとおりである。
5) 着火おくれに関係する事項
1] 燃料油の性質…燃料油の着火性が良いと着火おくれは減少する。
2] 燃料噴射時期…噴射時期が早いと着火おくれは大きくなり、噴射時期がおそいと着火おくれは小さくなる。
3] 圧縮比…燃焼室内の圧縮圧、圧縮温度は圧縮比が高い程高くなる。従って着火おくれも小さくなる。
4] 吸気圧力…吸気が絞られるとシリンダ内の空気密度はうすくなり着火おくれは大きくなる。
5] 吸気温度…吸気温度はシリンダ内の圧縮終りの温度に影響を与え、これによって着火おくれの大小は左右される。
6] 冷却水温度…冷却水温度もシリンダ内の温度に影響を与える。従って、着火おくれの大小に影響する。
7] 回転数…回転速度が上昇すればガス洩れ、熱損失も減少するので着火おくれは短くなる。
8] 負荷…負荷を増せば燃焼室内の温度も上昇するので着火おくれは短くなる。
6) 後燃えに影響を与える事項
1] 使用燃料の着火性の良否
2] 燃料噴射時期
3] 燃料噴射時間の大小
4] 燃料油の噴霧状況
5] 燃料噴射弁からのあとだれの有無
6] シリンダ内の圧縮圧力
7] 制御燃焼期間中の燃焼の良否
7) ディーゼルノック
ディーゼルノックは着火おくれ期間が長くなり過ぎた場合に起こる現象である。この期間が長くなるとその間に噴射される油粒は増大し、これらが着火点に達した時、一時に爆発燃焼を生じ、急激な圧力、温度上昇とこれに伴う燃焼圧力波によって振動音が発生する。この振動音がディーゼルノックと呼ばれるものである。