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d. 長時間の過負荷運転をした場合は、高熱のため潤滑作用が悪くなるし、高圧のためリング裏からの張り出しが強くなる。

e. 燃焼不良の場合、カーボンを多く発生し、これがリングとシリンダライナの間にはさまれて摩耗を激しくする。

f. シリンダライナ冷却水温度が不適の場合、すなわち冷却水温度の低過ぎ(過冷却)は燃焼不良や燃料中の硫黄分による硫酸腐食となり、高過ぎは潤滑不良となる。

3] シリンダライナ摩耗の影響

a. 圧縮漏れのため、圧縮温度が下がり燃焼不良となる。

特に始動や低速運転が困難となる。

b. 燃焼ガスが漏れるため、平均有効圧が下がり出力の低下とともに、クランク室の潤滑油が早く劣化する。

c. 高圧ガスの吹き抜けのため、ピストンリングの固着や折損を生じやすく、シリンダライナの摩耗はさらに激しくなる。

4] 硬質クロムメッキライナについて

シリンダライナ内面の耐摩耗性を向上するため、硬質クロムメッキを施したシリンダライナも一般的に使われている。メッキ層の表面は潤滑油の保持性が悪いため、ポーラス度を高めたチャンネルタイプやポケットタイプの硬質クロムメッキがシリンダライナ内面に用いられる。一方メッキの密着度が悪かったり、ポーラス孔が下地まで貫通している場合はメッキ層の剥離を生じ易く、燃料中の硫黄分が多く潤滑油のアルカリ度が不足する場合は白斑(ミルキスポット)現象(酸食)を生じることがある。またメッキライナにはピストンリングのライナ摺動面にメッキされたリングを用いるとメッキ同士が溶着するため、メッキリングは絶対に使用してはならない。

(4) シリンダライナの腐食

シリンダライナの腐食は内面(燃焼室側)と外面(冷却水側)とに生ずる。

a) 内面腐食め原因とその防止法

1] 燃料油や潤滑油に硫黄分や水分など不純物が多いときは、硫黄が燃焼して無水硫酸を生じ、これが水に溶けて硫酸となり燃焼室壁面に硫酸腐食を起こす。

これの防止には、不純物の少ない燃料油や潤滑油の使用と、シリンダ冷却水の出口温度を高目に保ってシリンダライナ壁温をできるだけ高くし、硫酸露点以上に保つようにすることが必要である。

2] 吸込空気中に塩分を多く含むときもシリンダライナ内壁が腐食する。吸込空気の取入口を適当な所に設けて機関まで管で導くなどして、清浄な空気を吸入させる。

b) 外面腐食の原因とその防止法(海水冷却)

ライナの冷却水側に腐食を生ずる原因には、工場廃水などで汚染された港に停泊中、水中に含まれる腐食性成分のために生ずる酸化腐食もあるが、多くは異種金属どうし、または同種金属どうしでも状態が異なっていて、これらの間に水があるとき生ずる電気腐食である。

 

 

 

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