(2) シリンダライナの内径計測(2・21表)
1] 測定位置(I)第1リングのTDCにおける位置は必ず測定する。
2] 測定位置(III)第1リングのBDCにおける位置、測定位置(I)はその中間である。
3] 偏摩耗量は、直角方向との寸法差をいう。
(3) シリンダライナの摩耗
1] 摩耗しやすい箇所
ピストンが上死点にあるときの第1リングの位置が最もひどく摩耗する。
この理由は次のとおりである。
a. 高圧ガスが、ピストンリングの背面に働いているが、上死点付近は燃焼圧が高く、リングの摺動面圧が高い。
b. ピストン速度が低く、油膜厚さが少なくなる。
c. シリンダ上部ほど潤滑油の回りが悪く、しかも高温にさらされ潤滑油の粘度が下り、潤滑作用も低下している。
次に摩耗が激しいのは、ピストンが下死点のときの第1リングがあたる部分で、ピストン速度の大きい行程中央は最も摩耗が少ない。
また、クランク軸方向に比べて、直角の方向が側圧のため摩耗しやすい。
2] シリンダライナ摩耗の原因と摩耗の方向
シリンダライナの摩耗は、避けることができないもの(正常摩耗)と設計、製作の不良または取扱い不良によって起こるもの(異常摩耗)の2つに分けることができる。
(正常摩耗)
摺動面が滑らかで、かき傷もなく、燃焼ガスの吹き抜け(ブローバイ)の跡を認められない状態。
(異常摩耗)
摺動面のかき傷、スカッフィング、ブローバイによる変色、段付摩耗などで、異常が発生する理由には次のようなものがある。
a. 潤滑油の粘度やグレード(APIサービスグレード)が適当でなく、粘度不足による油膜切れ、グレードが低いことによるオイルの劣化などにより、潤滑不良となり、摺動面のかじり、摩耗の増大となる。
b. 潤滑油の不足、または入れ過ぎ
潤滑油の不足は当然オイル切れによる焼付きとなるが、多過ぎる場合もスプラッシュによるオイル上りなどにより、リングの固着を招き、燃焼ガスの吹き抜け(ブローバイ)により高温、潤滑不良となり焼付きの原因となる。
c. 使用燃料油の不適、すなわち灰分の多いものは、これがリングとシリンダライナの間にはさまれて摩耗をひどくし、硫黄分の多いものは、これが燃焼して生じた硫酸によりシリンダライナ壁を腐食する。