(2) 居住地分布と地形の関係
地形条件と居住地分布の関係を考える場合、町内で最も住居の集積の高い比良松地区を例にとると興味深い事実が浮かぶ。比良松地区は南西部の平野と国道北部の平野を二分する町の骨格上に位置し、その両側の平地の高低差が10m以上あるということを説明した。更にこのエリアが、東部の河岸段丘に沿った形で立地していることを踏まえると、次のような仮説が想定できる。
筑後川は、まだ治水が充分でなかった頃、増水・氾濫の度に流路線形を変えており、その範囲はかなりの広域に及んでいたということであるが、河川の流路の変化は現国道386号よりも南側の範囲で留まっていたということである。
つまり、度重なる水害にも影響のない土地の標高があり、かつ各方面の農地にも程近いという地理上の利点から、旧街道のルート設定、あるいは居住地の集積が進んでいったのではないか。
このように、居住地の集積、街道の設置位置という切り口から見ても、地形条件との密接な関係を読み取ることができ、「地形を読む」という行為を通して、町の形成の歴史や先人の知恵や苦労までが浮かび上がるといったことが、今現在も目に見えて判りやすいという例は珍しく、まさに地形そのものが朝倉独自の魅力を表しているということができる。