4] 循環型農業への取組
園内の土づくりに使用する牛糞堆肥(年6〜8t)は、周辺地域の畜産農家が生産する良質のオガクズ牛糞堆肥を調達しており、地域内資源の有効活用に貢献している。
5] 農業の情報発信基地の役割
地区の農業事業者が経営していることを反映し、四季を通じた農業体験や生産物の直売、レストランの食材利用など「農業生産に対するこだわり」を重視した事業運営を行っている。農業のショウウインドーとして都市住民に農業・農村の本当の姿を見て、体験してもらうことを念頭に活動しており、実際に都市住民及び小中学校の校外学習としての利用も多く、農業教育の場の提供や農業に関する情報の発信基地としての大きな役割を果たしている。
カ 本事例から得られる示唆
1] 行政に依存しない住民主体の運営
町民が出資する有限会社として、出資者である町民がみずからの責任により、事業を展開している。確かに施設整備等大きな初期投資を伴う部分は行政の支援を得ているが、施設の企画・運営についてはいわば町民会社とも言える有限会社が行っている点で注目される。
加えて現在の取組みが、地区自治会での町民同士の議論を通じて立ち上がっており、この点で住民の主導による事業と位置づけることができる。また、こうした町民の責任感覚・当事者意識が、減収ではありながら増益を維持している事実にも結びついていると言えよう。すなわち「のどか村」は自分達の会社であるという意識である。
2] 物まねを排し、農業へのこだわりによるマーケットヘの訴求
施設系を整備する際、とかく先行事例等を視察し、類似する施設を作りがちである。のどか村では、地区での議論を経て町民の土地や農業生産へのこだわりを重視していくことを経営の基本方針としている。結果として、施設としては近隣にも類似のものはあろうが、公園内の生産農場で栽培された作物を味覚狩りや園内でのバーベキュー、レストラン食材として活用したり、校外学習にも対応きる木工、陶芸、リース教室の設置など娯楽性よりも農業、ものづくり体験重視の本物を目指している。こうした主張や提案が都市住民に受け入れられているものと見られる。