このように女性グループによる多様な事業の提案と実施により、のどか村自体の事業の多様化を実現している。したがって、収益構造も入場料や単独の施設に依存することなく多角化できているものと考えられる。実際女性による提案を受け、リースづくり、そば打ち等の体験工房、園内でとれた食材を加工する加工食品事業などが立ち上がっている。
オ 「農業公園信貴山のどか村」の地域への波及効果
1] 農家収入が4倍に向上
「のどか村」ができる前は南畑地区の農家全体の収入は2,000万円程度であったが、現在では約9,000万円が農家所得、借地使用料などのかたちで還元されている。常勤者には35〜60歳までは「のどか村」からの収入で生活できるだけの仕事と賃金を提供している。
2] 新規就農と雇用の場と生きがいの場を創出
正社員18名、パート50名のうち、南畑地区内では常勤11名、パート・アルバイト28名の雇用を創出した。このうち、地区内の常勤者は定年退職後(民間企業、JR、公務員等)の再就職が主でパートは主婦、繁忙期は子息も動員される。高齢者の持ち込み野菜販売など様々な雇用と現金収入の機会も創出した。更に農業大学校卒業生や地元以外へも広く門戸を開放し、農業後継者の養成や非農家出身者の新規就農先としても地域農業に貢献している。
園内のさまざまな施設の接客や地域食材を活用した薬膳料理の調理、自主的に技術を習得して来園者にリース教室の開催、加工食品の企画・生産など地域の主婦グループに活躍の場を提供している。
高齢者に対しては自家栽培野菜を持ち込み野菜として販売機会(価格は生産者が決定。「のどか村」は20%の販売手数料)を提供している。
3] 耕作放棄地の抑止・有効活用
「のどか村」の敷地(農地、山林等)は土地持ち農家から賃借であり、園内農地は全て耕作されている。栽培された作物は味覚狩、レストランの食材、直売など全て園内で消費されているが供給不足の状況で、将来的に「のどか村」敷地外の4ha余りの農地を「のどか村」が受託管理する計画もあり、地区の農業振興に貢献している。