(3) 他産業や町全体としての結びつき
○現状では観光以外の他産業との結びつきがほとんどみられず、それが滞留性の弱さの一因ともなっている。高原への来訪客が地元商店でのショッピング、地場産業施設の体験・見学、あるいは平場(本村)での農業観光等を楽しめるような繋がりを形成していく必要がある。
○その為には、観光が地域にもたらす波及効果についての認識が他産業の人たちも理解することが必要であり、そのための啓蒙活動を行政や観光協会等が積極的に展開していくことも重要である。
2 観光産業の経営課題-観光リゾート地経営の観点-
前節でみたように現在の小淵沢町のリゾート展開は、八ヶ岳南麓の高原という良質な資源性と、大都市東京圏や中京圏から近く交通条件もいいという市場性の良さによって、これまでは一定の利用客を吸収しえてきている。
しかしながら、一方では、地域に内在する多様な資源を必ずしも十分に活用し切れていないこと、とりわけ近年のリゾート志向で顕著になってきている“歩く観光”に対応できる素材が多様にあるにもかかわらず、その活用が十分ではないことが指摘される。
また、“点的”あるいは“単体施設的”な受け入れ体制に終始しているため、リゾート客の滞留性が弱く、引いては観光産業としての経済効果が十分に引き出せないままになっていることも指摘される面である。
小淵沢町の産業をみた場合、農業粗生産額9億円、製造品出荷額190億円、商業販売額80億円という中で、観光産業として捉えた場合、観光リゾート客の直接消費額でおおよそ60億円程度、一次波及効果(一般には直接消費効果の1.5倍程度になるといわれている)まで含めると100億円産業になるものであり、これからの小淵沢町の産業の一つの柱として位置づけていくことは重要な視点である。
さらに、観光の波及効果は経済面のみならず、地域のPRや来訪客と住民との交流等、地域活性化に与える社会効果の面でも大きなものがある。
即ち、小淵沢町の観光リゾートを考えるとき、狭い意味での“観光リゾート”の枠の中で考えるのではなく、“地域の総合産業としての観光リゾート”という観点からみていく必要がある。その際、特に重要な視点としてはつぎのものが挙げられる。