2] 施設(ハード)で人を呼ぶ観光の終焉
アンケートにも出ていたように、施設で人を呼ぶことは持続的でなくなっている。施設オープン当初は開業効果もあって、目標入込みを達成できるのであろうが、その後目論みどおりに集客できない施設も多いとされる。家族連れにせよ、中高年にせよ、楽しんで遊ぶことができない地域には人は来ないとの指摘は施設志向でフラワーパークなど周辺地域で類似・競合施設を作りがちな行政主導型観光振興への警鐘とも言えよう。
3] 人が主役
観光(リゾートであれ)を核とした地域振興には地元人材の存在が不可欠である。地域の文化、地域特性を背景とした生業(地場産業等)や特産品、自然などを知り尽くした人材と観光経営について問題意識を持つ人材がどれだけ地元にいるかが今後の観光地間競争での生き残りに影響を与えることが考えられる。行政に依存しては変化に対応できない。
場合によっては、地元にこだわることなく、外から人材を引き入れることも視野に入れるべきであろう。
4] 広域化する来訪者の行動形態
地元観光業者のコメントにもあるように、来訪者の行動特性は広域に渡っている。すなわち、一ヶ所に留まるというより、目玉、トピックス、関心に基き非常に広範囲に動いている。実際、地元タクシー事業者によると、中高年女性グループはタクシーをチャーターして花の名所めぐりのため小淵沢町を起点に蓼科(例えば、バラクラ・イングリッシュ・ガーデン)まで足を伸ばすこともあるという。一人十色といわれる消費者指向の中で、一ヶ所ですべてを充足することは最早不可能という指摘からも肯けよう。こうした来訪者の行動特性を踏まえ、小淵沢町では何を提供するのか、できるのかを考えていくことが必要となってきている。
5] 変化の波を見逃さない
小淵沢町はアンケート結果にもあるようにリピート客が比較的多い。これは、小淵沢町のもつ自然や山岳景観の素晴らしさ、馬牧場やペンションオーナーの努力、役場の尽力等様々な要因が考えられる。一方、ヒアリング結果にあるように、「安・近・短」が主流である一方で「高額商品の人気」という観光消費構造の二極化、中高年を中心とする熟年層の旅行市場への参画、総合学習制度の導入など現在そして将来に向けた変化が起こりつつある。こうした変化の波は今は小さくても、将来は既成事実化していく。したがって、今のやり方や考え方に固執することなく、小さな変化にも留意しながら、大きな変化に対応していくことが必要である。