出典:「生涯学習と地域づくり−全国自治体の動向−」生涯学習と地域づくり研究会(平成11年3月)
(2) 地域づくりを目指した施策
生涯学習による地域社会の活性化については、“行政の各部局が連携しながら、まち全体で生涯学習に取り組む体制を整備していこう”という趣旨の、臨時教育審議会における第3次答申(昭和62年)に沿って、全国の自治体では「生涯学習を進めていくまちづくり」を目指してきた。しかしながら、この「まちづくり」の取組みは、多様な学習活動の実践までで終わっているところが少なくなく、全体としてはまちづくりという面で必ずしも十分な成果をあげてきたとは言えない。
こうした状況を踏まえ、平成11(1998)年の同審議会答申「生涯学習の成果を幅広く生かす」では、学習者が学習の成果を自ら社会に生かしていくための社会的なシステムの構築が提言されている。住民が生涯学習の成果を生かすことによって、地域社会の活性化、まちづくりを進めることに積極的に取り組む必要があると言及しており、「生涯学習によるまちづくり(学習成果のまちづくりへの活用)」へ意識を転換する必要性を説いている。
地域社会の課題を解決し、地域を活性化する上で、住民の意識的な問題解決型の学習が重要な役割を果たすため、学習成果をまちづくりに生かす仕組みの整備が課題となっている。
先進的な取組みを行っている市町村では、1]生涯学習の対象範囲は行政部局すべてに関係してているため、総合的な行政の観点から生涯学習に取り組む必要性が高まっていること、2]今日行政が抱えているすべての課題はもともと地域住民の課題であって、あらゆる地域課題を生涯学習のテーマとして行政と住民とがそれぞれの立場、役割で課題解決にあたること(パートナーシップ)が求められていること、などを認識している。そのため、住民と行政の双方が協力して地域の課題を考え、解決していくため、生涯学習施策に取り組んでいる。
また、学校が本来持っている求心力を生かして地域教育力を高め、地域の課題解決にあたるのが効果的であるという考え方にたって、学校を重視する考えを持つ市町村が増えてきている。