入札評価の手法としては、大きく2つのシステムが存在する。第1の評価システムは、敷居システム(Threshold system)である。このシステムでは、まず、信用レーティング、過去の経験により敷居設定する。その事前審査の後は、価格で落札者を決定する。このシステムが用いられている例としては建設分野があげられる。第2の評価システムは点数システム(Points system)である。このシステムでは、価格に加えて質に関するポイントを加えて選ぶ。このシステムが適用される分野としては、コンサルタント、情報システムの調達といった分野がある。
イ 優遇措置
(ア) 小企業優遇
ニュージャージー州においては、一定の小企業優遇が存在する。小企業の定義は従業員100人以下というものである。また、対象企業はニュージャージーに拠点のあるものに限定される。このプログラムにより、調達総額の15%程度のシェアを小企業が持つ。
(イ) 少数民族・女性企業優遇
ニュージャージー州においては、少数民族企業あるいは女性企業を優遇するプログラムが存在する。いずれも、ニュージャージー州を本拠とするものを対象としている。その結果、優遇された少数民族企業は全調達のうちで約7%のシェア、優遇された女性企業は約3%シェアを持つといわれる。
(ウ) 州産品優遇(Buy State)・国産品優遇(Buy American)
ニュージャージー州に州産品優遇はない。ただし、相互主義を求める立法(ある州が一定比率の優遇を行っている場合にはその州に本拠をおく企業に対してはその比率分不利に扱う)は存在する。1994年時点では、公共事業の資材に関しては国産品を優遇する規定があった。しかし、現在の段階では存在しないようである。
(エ) リサイクル品優遇
ニュージャージー州においてもリサイクル品優遇制度が存在するようである。
ウ 外交上の制裁としての差別措置
ニュージャージー州においては、マサチューセッツ州のようなビルマ法は存在しない。しかし、北アイルランドに関する法は存在しており、北アイルランドでビジネスを行っている企業は入札から除外されることになっている。
エ WTO政府調達協定への対応
前述のように、ニュージャージー州はWTO政府調達協定の対象とはなっていない。ニュージャージー州がその対象となることに合意しなかったのには次の2つの理由がある。第1に、WTO政府調達協定の対象になり、一般競争入札の対象を広げることは、調達価格の低下というメリットはあるが、保護主義的観点からは政治的問題を引き起こす。そのため、調達部局は政府調達協定を支持したが、商業担当部局(Commerce Department)は反対であった(22)。第2に、WTO政府調達協定への加入が論じられた時点において、ニュージャージー州においては州知事選挙が行われていた。そのため、ニュージャージー州においては、協定加入に必要な州知事のコミットを確保することができなかった(23)。
(6) ニューヨーク市(24)
ア 調達の仕組み
ニューヨーク市政府における調達担当部局はPCAS(Procurement Citywide Administrative Service)である。ここでも、PCASは一般の調達部門であり、建設サービスについては別の部門が担当している。調達システムに関しては一定の情報化が進みつつある。