(ウ) 州産品優遇(Buy State)・国産品優遇(Buy American)
マサチューセッツ州においては、一般法(Mass. General Law ch. 7, section 22(17))において、「他の条件が全て同じならば、州内で製造販売された物品を優遇する」という規定がある。しかし、現在では州産品に関して具体的な優遇策(一定の比率での優遇といったもの)はない。その意味で、一般的には、州産品優遇策はないといえる(19)。
しかし、個別的には、一定の優遇策が残っているようである。例えば、個別物品の性格からして地理的制約が要求されるものはあるという。矯正施設・病院担当部局における食品調達に関しては、地元の農民からという条件が付いている。また、警官、刑務所職員の制服については、緊急調達の必要がある場合もあるので、州内に施設・倉庫をあるいは施設・倉庫へのアクセスを持つことが条件となっている。
マサチューセッツ州において国産品優遇法は存在しない。
(エ) リサイクル品優遇
マサチューセッツ州においてもリサイクル品優遇制度が存在するようである。
ウ 外交的制裁としての差別措置
マサチューセッツ州においては、有名なビルマ制裁法が成立し、適用された(20)。ビルマ制裁法とは、ビルマと取引関係等のある企業の入札に関しては、入札価格の10%のペナルティーを課すというものである。このような制裁法のモデルになったのは、アパルトヘイトを行っていた南アフリカに対する制裁法である。マサチューセッツ州においても南アフリカ制裁法が存在し、その関係者がビルマ制裁法のきっかけを作った。他にも、北アイルランド関係に関して制裁法が存在する。このビルマ制裁法に関しては、日本やEUの提起によりWTOの政府調達委員会協議の対象となり、日本等はパネル提訴の可能性もちらつかせた。しかし、最終的には、米国内において産業団体がマサチューセッツ州を提訴し、最終的に米国最高裁でマサチューセッツ州が敗訴することで、国内法的に決着が付いた。
エ WTO政府調達協定への対応
WTO政府調達協定に対応して直接的に修正したのは技術的な点のみである。具体的には、入札受付の40日前に公示するといった要請が修正項目となった。その際、一般的背景としては全般的な調達改革が存在し、その一環としてWTO政府調達協定の実施も埋め込まれたという側面があった。
前述のように、ビルマ法による外交的制裁としての差別的措置はWTO政府調達協定の観点から疑義が指摘された。しかし、これは政府調達協定への対応として抑止されることはなく、結局は国内法上の問題として処理された。また、この処理に際しては、案件は政治化し裁判にまで至ったため、案件は調達部局の手を離れ、知事事項となった。
個別の優遇措置については、WTO政府調達協定実施上それほど問題にならないと思われる。小企業優遇、少数民族・女性企業優遇、環境上の措置は例外として明示されている。州産品優遇としては、矯正施設・病院の食料調達等について優遇措置が残っているようであるが、規模が適用下限を越えない限り問題はないと思われる。
(5) ニュージヤージー州(21)
ア 調達の仕組み
ニュージャージー州の調達担当部局はPCSP(Procurement and Contracting State Purchses)である。ニュージャージー州に関しては、州レベル、地方自治体レベル、学校区レベルで各々異なった調達制度が存在し、各々別個の法(州についてはtitle 52、地方自治体についてはtitle 40、学校区についてはtitle 18)が規定している。また、一定の事項に関しては、関係機関に委任している。例えば、建設については、財務部局(Treasury)が担当している。