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以上のように、行政命令はできていないものの、個別的に政府調達協定への対応がとられた。入札指示書(Bidder Instructlons)において一定額以上(例えば商品については50万ドル以上)はWTO政府調達協定に従うように明記された。また、入札情報はカリフォルニア州契約登録簿(California State Contract Register)に登録することとされた。

では、実際の実施状況はいかがであろうか。前述のように、カリフォルニア州には、まず、外交制裁としての差別措置(児童虐待労働を用いた産品に関して)が存在する。これがWTO協定に抵触するか否かという議論は十分に行いうる。また、いくつかの優遇措置が存在する。しかし、これらは政府調達協定の対象外か適用除外の対象となっているようである。例えば、停滞地域発展プログラム、障害退役軍人優遇は政府調達協定の米国付表2の注において明確に適用除外とされている。また、小企業優遇も一般的に適用除外となっている。また、リサイクル品の優遇は環境上の措置が明示的に適用除外とされているので問題はないであろう。ただ、旧基地対策であるLAMBRAが本当に停滞地域対策なのかについては若干解釈上争う余地はあろう。

また、カリフォルニア州において困難を招くおそれのあるのは、しばしば条文上存在する法律が実施されていないこともあることである。例えば、バイアメリカン法については司法長官の意見で執行停止に、バイカリフォルニアン法について20年前の裁判所の判断で執行停止になっているという(ただ、貿易・投資円滑化ビジネス協議会の資料等では未だに存在することになっているので、実際のところはより詳細に実施状況を確認する必要がある)。また、少数民族・女性企業優遇制度も、この法自体が差別的で憲法違反であるという裁判所の判断が出された結果、廃止された(条文だけは残っているのかは不明である)。その結果、仮に実際には貿易を差別していないとしても、差別しているのではないかと誤解させるおそれがある。

 

(4) マサチューセッツ州(18)

ア 調達の仕組み

マサチューセッツ州における調達部局はPAD(Purchasing Agents Division, Office fir Administration and Finance)である。PADは一般調達部局であり、一定の調達業務については他の部局に権限委譲することもある。例えば、道路建設に関してはマサチューセッツ道路庁(Mass Highway Authority)に一定の枠組みの下で委任されている。ここにおいても、州政府の調達制度は連邦政府とは全く別である。なお、州内の地方自治体は州政府の調達方式を使ってもいいし、独自の調達制度を採用してもいい。マサチューセッツ州においては、現在のPADディレクターの下、1996年春くらいから内在的に調達システム効率化・透明化の試みが行われてきた。その契機は州知事の交代である。具体的には、インターネットの利用促進、1920年代から残っていた500ドルという適用敷居値を上げるといった作業がなされた。また、道路建設関連の調達においては、事前審査(prequalification)のシステムが導入されている。そこでは、当該企業の保証総額、経験、財務情報等が検討される。

 

イ 優遇措置

(ア) 小企業優遇

マサチューセッツ州においては一定の小企業(SBE:Small Business Enterprise)優遇が存在する。これは経済開発部局(Mass Office of Economic Development)の担当である。このプログラムにおける小企業の定義は年売上上限200万ドルというものである。

 

(イ) 少数民族・女性企業優遇

マサチューセッツ州においては一定の少数民族・女性企業優遇が存在する。少数民族・女性企業の認定は少数民族女性ビジネス支援局(State Office of Minority & Women on Business Assistance)によって行われる。認定の基準は51%以上が少数民族あるいは女性により所有されかつ経営されているものである。その際本拠はマサチューセッツに限られない(かつ相互主義も要求しない)。また、売上高の制限もなく、大企業も優遇策の対象になりうる。例えば、ニューイングランドオフィスサプライというオフィス器具・家具を扱う比較的大きな企業にも優遇が与えられているが、このような大企業に優遇を与えることに関しては批判もある。この少数民族・女性企業優遇による調達の物品サービス全調達に占める比率は約1.5-2%程度である。

 

 

 

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