また、LAMBRAは、旧基地地域において事業を行う企業に対して5%優遇を行うという制度である。
(エ) 障害退役軍人優遇
障害を持った退役軍人の企業を優遇するプログラムとして、DVBE(Disabled Veteran Business Enterprise Participation Program)が存在する。これは、調達価格において一定の比率で優遇するものではなく、調達総額の3%を障害退役軍人企業へ配分することを目標とするものである。障害者退役軍人企業としては、660個程度の企業が認証されている。ただ、これらについても同様にモニタリングの問題が存在する。
(オ) 州産品優遇(Buy State)・国産品優遇(Buy American)
バイアメリカン、バイカリフォルニアン法は、条文上未だに存在する。例えば、バイアメリカン法によれば、州で調達する自動車は全て米国産であることが規定されているという(16)。しかし、バイアメリカン法については司法長官の意見で執行停止に、バイカリフォルニアン法について20年前の裁判所の判断で執行停止になっている。
(カ) リサイクル品優遇
カリフォルニア州においてもいくつかのリサイクル品優遇制度が存在するようである。
ウ 外交的制裁としての差別措置
カリフォルニア州においては、現在のところ、マサチューセッツ州のビルマ法のような外交的制裁としての調達差別措置はない。ただ、そのような提案は、2、3年ごとに州議会に提案されてはいる。他方、カリフォルニア州においては、児童虐待労働によって生産された製品の調達を禁止する法(S.B. 1888(to amend Section 6108 of the Public Contract Code):2000年9月採択)がある。これは、既存の強制労働(forced labor)等に加えて児童虐待労働(abusive forms of child labor, exploitation of children)による産品の調達を禁止したものである。これについてもモニタリングの問題が存在する。
また、カリフォルニア州においては、調達における差別措置ではなく、免許付与における差別措置を外交的制裁として用いている場合が存在する。具体的には、ホロコーストの被害者に対する保険金支払いを拒んでいる保険会杜に対して、保険会杜免許更新拒否を制裁手段として使える立法が行われた(17)。
エ WTO政府調達協定への対応
WTO政府調達協定への対応に際しては、調達部局であるDGSに加えて、貿易部局も熱心に対応した。カリフォルニア州の場合、貿易部局はUSTRとの接点となるSPOC(State Point of Contact)のメンバーであり、カリフォルニアの輸出促進の観点から政府調達協定に関心を持っていた。また、立法部局も貿易の観点から立法活動をモニターしている。例えば、通商部局を通したイギリスやJETROのインプットによりいくつかの立法を止めたこともある。そのような立法を抑制する手段としては、州議会議員の教育が大切であるとされ、また、協定違反の立法が行われそうな時は、知事に署名しないように求める。
WTO政府調達協定に対して、締結当時のウィルソン共和党知事の下のDGSディレクターはNASPOを通して熱心であった。そのため、具体的な実施措置として、対応のための行政命令(Executive Order)策定を考えた。しかし、この構想は1998-99年頃までは続いたものの、最終的には時間切れによりついえた。その背景には、第1に労働組合の反対があった。また、それを背景に、議会においても反発があった。その結果、このような行政命令を通すことができないのみならず、調達関連の法をまとめること自体、労組の反対で通らなかった。第2に、州政府内コミュニケーションの問題があった。特に、州政府における大きな部門である交通部門、食料農業部門に対して、WTO政府調達協定の意義の意味を徹底させることは難しかった。第3に、そもそも政府調達協定における適用対象が曖昧であるという問題があった。つまり、政府調達協定第2条4(a)において、適用対象の敷居を決める際の価格は、「過去12か月間の間に締結した同種の一連の契約の実際の価格」ということになっているが、何が同種なのかについて解釈上幅があり得た。その結果、具体的に何を対象するのかを巡ってなかなか明確な判断ができなかった。